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2018.09.07

仮想通貨、大手金融の参入はまだまだ先か[週間ビットコイン動向]

hiv360 / shutterstock

8月下旬以降、じりじりとした反発で80万円台を回復したビットコインだが、日本時間9月5日夜辺りから下げ足を強める格好となった。

8月23日以来となる70万円台割れの場面が見られるなど、さえない推移となっている。米大手投資銀行ゴールドマン・サックス(GS)が、仮想通貨デスク設立計画をホールドすると伝わったことが悪材料視されたようだ。

ビットコインを筆頭とした仮想通貨は、株や為替といった伝統的金融資産とは異なり、明確な投資指標を持たないことから需給面に左右されがちである。今回の下げのきっかけとなったのは、GSのネガティブニュースで決まりだと思うが、そのタイミングでヘッジファンドによるポジション解消の動きが強まったと推測する。実際、GSのニュースが流れた後、ビットコイン価格は瞬間的に3%下落した。

その後、米国主体の時間帯はさほど目立った動きは出なかったが、日本時間9月6日の8時頃から下げ幅を広げる展開となった。このとき、フィスコ仮想通貨取引所(FCCE)では大口の売りを観測している。大手国内仮想通貨交換所でも売りが膨らんだことから、一部からは「売買が入りにくくなっている」との声も聞かれた。

一方、GSの最高財務責任者(CFO)が、上記の報道に対して「フェイクニュースである」と発言。「顧客のニーズに合わせるためにビットコインのデリバティブの開発を引き続き進めている」と米CNBCが報じている。報じられた組織のしかるべき責任者が「フェイクニュース」であると発言したにも関わらず、ビットコインの価格は下落前の80万円台に届かない水準で推移している。

これは、GSのCFOによる「機関投資家に安全な水準の資産管理(カストディ)サービスを提供するのはまだ難しい」とコメントしたことが背景にあると思われる。つまり「フェイクニュース」ではないが、カストディサービスの観点から、GSが仮想通貨サービスを実現するには時間がかかるとの見方が強まったのだろう。

カストディとは、株など有価証券に投資をする際、証券の保管、管理を行う業務のことを指す。こうした業務を行う機関はカストディアンと呼ばれ、証券の保管業務だけではなく、配当金や元利金の受渡し、運用資産の決済、運用成績の管理などを業務内容としている。

仮想通貨が伝統的金融商品と同等とみなされるためには、カストディは必要不可欠なサービスといえる。今回報じられたサービス整備の遅れは、大手金融機関が仮想通貨関連事業へ本格的に参戦するのにはまだまだ時間がかかると捉えられたのだろう。

「フェイクニュース」と報じられても弱いままの地合いを見る限り、相場の方向性(モメンタム)は重いと見た方が適切だろう。想定レンジは年初来安値水準の65万円から75万円とする。

連載 : 「仮想通貨」マーケット実況
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文=田代 昌之

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