経済・社会

2018.09.05 07:30

中国で不買運動の台湾カフェ企業「85℃」 運営元の株価急落

(Courtesy of 85cbakerycafe.com)

中南米を外遊中だった台湾の蔡英文総統は8月12日、ロサンゼルスで台湾系のカフェチェーン「85℃」に立ち寄った。その報道を見た中国のネットユーザーらは、85℃のボイコットを開始した。

なぜなら、中国で多数の店舗を展開する85℃は、台湾の独立を容認しているとみなされたからだ。その後、85℃運営元の台湾企業「グルメマスター(美食達人)」の株価は22%も急落し、3億5600万ドル(約396億円)に及ぶ時価総額が吹き飛んだ。

グルメマスターは2012年に、フォーブスが選ぶ「アジアの売上10億ドル以下の優良企業200社リスト」(Asias 200 Best Under A Billion List)に登場していた。

グルメマスターの現地法人はその後の声明で、「一つの中国」原則に基づく「1992年合意」の支持や「両岸(中台)は家族」を強調した。中国はさしあたり台湾の自治を認めているが、将来的には併合したい考えだ。

2016年に現職についた蔡英文は1992年合意を支持しないと公言しており、中国と台湾の対立は深まっている。

台湾の中央研究院で政治学を担当するWu Chung-liは「企業らは中国の巨大な市場を無視する訳にはいかない。だからこそ85℃の中国法人は、1992年合意の支持を表明したのだ」と述べた。85℃の広報担当者は今回の件の詳細や、中国における売上についてのコメントを避けた。

85℃の売上の大半は、中国で展開中の600店舗からもたらされている。同社は台湾で430店舗を運営している。85℃の名前の由来は、美味しいコーヒーにふさわしいお湯の温度からきている。85℃では手頃な値段のコーヒーやケーキを楽しむことができ、人々の憩いの場となっている。

グルメマスターの利益は昨年、約23%の上昇となり約7030万ドルを記録した。同期間の売上7億5700万ドルの3分の2が中国からもたらされた。同社は中国や米国での店舗数拡大を目指し、2017年に5900万ドルの投資を行なっている。

台北の調査企業「Polaris Research」の担当者は、グルメマスターはこの件に関して沈黙を守り、嵐が過ぎ去るのを待っていると述べる。「中国での不買運動が収まれば、業績はもとに戻るだろう」と彼は話した。

しかし、中国の政府高官らは今後さらなる圧力を、台湾企業に与える可能性もある。

編集=上田裕資

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