なおアマゾンなど大手IT企業はすでに、AIを活用した「ファッションデザインアルゴリズム」の開発に乗り出している。まだまだファッションショーでお披露目できるレベルではないものの、そう遠くない未来にファッション業界で重宝されるツールになっていくかもしれない。
生産から消費までAIが浸透したら…
これまでトレンド分析や仕入れ、デザインなどに活用される事例を取り上げたが、いずれ素材の選定や生産、商品の量産、はては流通・廃棄品の削減などあらゆる局面に人工知能が取り入れられていくというシナリオは想像に難くない。また、データとAIが駆使されることで、個人の趣味嗜好に合わせたパーソナライズが一層進んでいくはずである。
生産から消費までファッション業界のサイクルのすべてにAIが浸透した時(はるか先の未来になるかもしれないが)、ファッションの持つ意味も変化していくかもしれない。着る服には、個性やオリジナリティという意味合い以外にも、時代や風習、文化、コミュニティ性など「他者との共通項」というニュアンスが少なからず含まれる。しかし、データと人工知能がもたらす究極のパーソナライズは後者を瓦解させていくことになるからだ。
データに頼って着るのが幸せか、誰かとライフスタイルや共感を分かち合える服を着るのが幸せか。ファッション業界は、そんな根源的な問いにいずれ直面するかもしれない。
連載 : AI通信「こんなとこにも人工知能」
過去記事はこちら>>