一方、経済的な苦境に陥っているイランは、8月12日、ロシアを含むカスピ海沿岸4カ国と、「カスピ海の法的地位に関する協定」に署名した。カスピ海は地下資源に恵まれ、領有権などをめぐって20年以上にわたり協議が難航していた。イランがロシアの顔を立てた形だが、米メディアは「最近のイランと米国との関係悪化が決着を導いたようだ」と伝えた。
イランの両サイドにつく中国とロシアは、互いに関係重視を鮮明にしている。プーチン・ロシア大統領が威信をかけて極東ウラジオストクで毎年開催している国際会議「東方経済フォーラム」(9月11~13日)に習主席が初めて出席。トランプ政権への対応をめぐり突っ込んだやりとりをするとみられる。
トルコも「反トランプ有志連合」へ
トランプ政権と「反トランプ有志連合」の対立やSNS上の情報戦争は、今後、中間選挙に向けて、ますます激化する可能性が高い。中間選挙への介入目的は言うまでもなく、野党である民主党を勝利させて、トランプ政権を無能力化することだ。トランプ氏が中間選挙で敗北すれば、自らが渦中にあるロシア疑惑で議会に弾劾される事態もあり得る。トランプ氏のなりふり構わぬイラン、中国叩きは、中間選挙の勝利に不可欠な要素となっている。
トランプ氏が核合意を順守しているイランを攻撃する背景には、16年の大統領選で自身を支持した最大の宗教勢力、キリスト教福音派(人口の約4分の1)の存在もある。聖書に忠実な福音派は親イスラエルで、そのイスラエルが最も敵視するのがイランなのだ。ちなみに米国とトルコの対立要因であるトルコで拘束中の米国人牧師も福音派である。
トランプ氏が中国に仕掛けた貿易戦争も、有権者の支持を意識したものだ。ここでの「有権者」とは製造業で働く白人労働者のことで、彼らは外国製品を「すべてダンピングされたもので、仕事を奪っている」と信じ込んでいる。トランプ氏は同様の文脈で同盟国、日本も容赦しない構えだ。
トランプ政権の追加関税で通貨が下落したトルコは、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国にもかかわらず、ロシアの最新鋭地対空ミサイルシステムS400を来年から導入する。さらに中国からもインフラ分野で融資協力を取り付けており、「反トランプ有志連合」には、さらにトルコも加わり拡大傾向にある。
連載 : ニュースワイヤーの一本
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