経済・社会

2018.08.29 06:30

「反トランプ有志連合」、米中間選挙にサイバー介入か

トルコの首都アンカラで会談後手を握る(左から)イランのロウハニ、トルコのエルドアン、ロシアのプーチンの各大統領(2018年4月4日撮影、Getty Images)

トランプ米政権が11月の中間選挙をにらんで各国との対決姿勢を強めるなか、中国やロシア、イランを枢軸とする「反トランプ有志連合」の動きが活発だ。目に見える関係の強化のみならず、SNSを舞台に、トランプ氏を標的にした情報操作や選挙妨害で「共同戦線」を張っている可能性が出ている。

SNS最大手のフェイスブックは、8月21日、米国民らを狙い情報操作を目的につくられた652件の偽アカウントやページ、グループを摘発・削除したと発表した。フェイスブックは、一連の情報操作の活動拠点はイランやロシアにあるとみている。

これに先立ち、米マイクロソフトも、ロシア政府とつながりのあるハッカー集団が作成した偽のウェブサイトを閉鎖。サイトは米上院や共和党系シンクタンクなどを装い、訪問者の情報を盗もうとしていた。

現時点では、イランとロシアがサイバー介入で連携している明確な証拠はないものの、ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、11月の中間選挙への外国の干渉について、ロシアのほかに「中国や北朝鮮、イランも選挙に干渉してくる恐れがある」と名指しで警告。トランプ氏自身も「ロシアにばかり目を向けているすべての愚か者たちは、中国に目を転じるべきだ」と主張している。

中国にとってイランは重要沿線国

今年に入ってトランプ政権との対立が鮮明となってきたイランと中国も、生き残りを懸けて連携を模索している。

トランプ氏は5月、2015年に結ばれた欧米などとのイラン核合意からの離脱を表明し、国際社会に対して11月からのイラン産石油禁輸措置に協力するよう呼び掛けたが、ロイター通信によれば、中国は最近イラン産石油の輸入を継続するため、輸送を自国の船舶からイラン国営タンカー会社(NITC)の所有するタンカーに切り替えている。

米国の制裁が自国の船舶に及ぶのを回避し、かつイランからの石油輸入を確実なものにするのが狙いとされる。また、仏トタルがイランの天然ガス田「サウス・パース」開発プロジェクトから撤退したことを受けて、中国石油天然気集団(CNPC)が同プロジェクトの権益を引き継ぐ方向だ。

中国にとってイランは、習近平国家主席が提唱した現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の重要沿線国。また、イランの資源インフラに関与することで、貿易戦争の相手である米国からのエネルギー輸入への依存を減らす戦略である。
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文=水本達也

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