キャリア・教育

2018.08.27 08:00

MITで働く21歳サイエンティストの「腹ペコの野性」#30UNDER30


「研究ってなんでもあり」

──科学者になるための一般的なキャリアパスは、大学を出て、修士課程、博士課程に進み、大学の研究室に所属するというものです。高校生がどんなふうにして科学者になったのでしょうか?

研究の本来の姿って「なんでもあり」なんだと思っています。だからぼくのスタイルは、いまもずっと独学です。

このスタンスを、ぼくは実験のなかで確立していきました。独学で生み出したアイデアでも、実験してみると案外上手くいくものもある。すると、偉い人が言ったことがすべてじゃないということが目の前で明らかになってくるんですよね。「研究ってなんでもありなんだな」と、経験でわかるようになる。何をやっても許される世界だから、むしろぼくにとってはすごく生きやすいと思っています。

──研究一筋の高校生って、ほとんどいないですよね? どんな高校生活だったんでしょう? 

友達はもちろん、授業もそっちのけで研究に没頭していましたね。大学の研究室や公開ゼミがあれば訪ねて、つくった資料を配って、30分くらいひたすら自分の研究をプレゼンしました。結果は散々で、「何? 君、高校生? 大学も出ていないのに研究なんてできるわけないだろう」と、偉い先生にディスられたりしたこともありました(笑)。


2014年に行われたTEDxKids@Chiyodaに、片野は「医学研究に年齢制限はあるか」とのテーマで登壇した。その答えが「NO」であることを、彼は自らの行動で示し続けている。

Joiとの邂逅

──MITメディアラボとは、どのようにして出合ったのでしょう?

メディアラボは高校時代のぼくにとって、まさにクールな存在でした。ぼくが強く惹かれたのは、現在はメディアラボ「Sculpting Evolution Group」のリーダーであるケビン・エスベルトです。彼は2013年、ハーバード大学で「遺伝子ドライブ」という技術を開発します。これは特定の種の生物に対し、特殊な遺伝子改変を施すことで、その種全体の個体数をコントロールしてしまう技術です。

人間に使われれば恐ろしいことにも繋がる技術であることから、大きな社会議論を呼んでいました。そして彼はこの技術の危険性を認識していたため、社会に対し研究をオープンにし、対話を生み出していくことを求めました。研究機関としてそれを認めサポートしたのがメディアラボでした。

ぼくはケビンにずっと憧れていて、会ってみたいという思いから、何度もMITにメールを送っていました。しかし、よくわからない高校生が突然メールを送っても、当然相手にされないですよね。
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文=森旭彦 写真=帆足宗洋(AVGVST)

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