だが、データが示すのは別の話だ。米経済は衰退しているどころか、成長を維持している。今年第2四半期の国内総生産(GDP)の成長率は4.1%。下表に示す長期(1947~2018年)の年平均成長率、3.22%を大きく上回っている。GDPが20兆ドル(2210兆円)に迫る“成熟国”としては、悪くない伸び率だ。
*1947~2018年/**1989~2018年/***1980~2018年
出典: tradingeconomics. com(8月16日時点のデータに基づく)
米経済の成長は、金融市場にも反映されている。ニューヨーク証券取引所の会員企業で勤務した経験を持つ米ロングアイランド大学ポスト校のクリストファー・ベイツ兼任教授(金融額)は、「過去の4つの政権の失策によって、米経済は下り坂だった」と指摘すると同時に、次のように述べている。
「現政権は貿易政策と米国第一主義の政策に、政治モデルではなく健全なビジネス・モデルを取り入れている。雇用を創出し、企業をメキシコやカナダ、その他各国から米国に呼び戻し、インフラを改善することによって、米国は偉大な国にあるべき競争力を持つための再構築を進めている」
「米政権がここ一年間に導入した政策は、“予測不能”なものではなく“非政治的”なものだ」
だが、ニューヨーク市立大学バルーク校のクリストス・ジアニコス教授(金融額)は、それほど熱心にこうした見方を支持していない。「米経済は成長しているというよりも、安定している」という。
さらに、米経済の今後については懐疑的だ。「主要政策に関する米国民の見方が大きく分断されていることを、非常に懸念している」として、グローバリストとそれ以外の人たちの間に見られるような分断を例に挙げている。
中国は「日本のように」なるのか
長期にわたって世界経済の動向を追ってきた人は誰でも、過去にも米経済の衰退に関する議論を聞いたことがある。エズラ・ヴォーゲルは1979年に出版した著書「ジャパンアズナンバーワン─アメリカへの教訓」の中で、経済力を強める日本が、低迷する米国を追い越すことになると主張した。
だが、“力を増す日本”の10年後に何が起きたかは、よく知られていることだ。日本経済の成長は止まり、今日まで続く長きにわたって停滞し続けている。輸出主導型の経済を内需主導型に移行させることができなかったためだ。一方、米経済は過去に比べれば低い伸び率ではあるものの、再び成長に転じ、伸び悩む日本経済に大差を付けている。
そして、中国もまた、日本と同じ運命をたどることになるのだろうか──それについては、何とも言い難い。日本の経済成長を一層困難にした人口問題は、中国にはない。一方で中国には、日本のようなイノベーションの力もない。
また、中国は日本と同様に内需によって大きく助けられることがないが、その理由は明らかに、消費経済を支える制度も政策もないことだ。
中国の2009~10年の経済刺激策における資金配分についてシカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスが行った調査結果では、配分が国有企業に偏っていたことが指摘されている。経済が急速に成長していた2008年以前には、民間企業への資金再配分が目立っていた。
こうした変化が中国の経済成長を止め、米国を追い抜こうという野心をそぐことになる可能性はある。