ビジネス

2018.08.20

プロ経営者が明かす、意思決定の基準とは?

アルヒ代表取締役会長兼社長 浜田宏

神が降りてきた──。

浜田宏は、ARUHIの経営を引き受けたときの心境をこう振り返った。

デル日本法人の売上を6年で5倍に引き上げ、リーマンショック、タイの洪水や円高などで赤字に陥ったHOYAを2年でV字回復──。

「プロ経営者」として華々しいキャリアをもつ浜田のもとに、PEファンドのカーライルから電話がかかってきたのは4年前のこと。カーライルは住宅ローン専門の金融機関であるSBIモーゲージ(現ARUHI)を買収。その舵取りを浜田に打診した。

「金融も不動産も興味がない。ほかを当たってください」

最初は、にべもなく断った。判断基準は、好きか、嫌いか。住宅金融支援機構の商品である「フラット35」の販売手数料で稼ぐビジネスモデルは、浜田の「好き」の範疇に入らなかった。

しかし、何度もアプローチを受けるうちに、「神が降りてきた」かのようにアイデアがあふれてきた。

「お客様は住宅ローンという商品が欲しいわけじゃない。お客様が望んでいるのは、家を買って人生を変えること。ARUHIが人生を新しくしたい人たちを応援する会社だと考えたら、ほかにもいろんな展開が可能になると気づいたんです」

住宅ローンは返済期間が長く、その間、顧客との関係が続く。住宅購入前の家探しのサポート、子どもの教育資金の相談、介護施設の紹介……。次々とアイデアがあふれ出てきて夢中になった。結局、「どうせやるなら自分もリスクを取りたい」と、自らの出資を条件に入れるほど前のめりでオファーを受けた。

浜田が好きか嫌いかで判断するのは、いまに始まった話ではない。学生時代、時給の高い家庭教師ではなく、時給の安い喫茶店で働いた。「わいわいやりたい」からだ。大学卒業後に山下新日本汽船(現商船三井)へ入社したのも「ダイビングが好き。船会社なら海のそばにいられると勘違いした」と笑う。

ただ、日本の会社のカルチャーにはなじめなかった。平日は酒や麻雀、週末はゴルフで上司に付き合う。我慢できずに退職願いを出したら、オフィスの真ん中で罵倒された。

「おまえは会社を裏切るのか!」

それでも浜田は意に介さない。「世界で通用するビジネスパーソンになりたい」と、自腹でMBA留学してコンサルタントに転身した。
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文=村上 敬 写真=間仲 宇

この記事は 「Forbes JAPAN 「全員幸せ」イノベーション」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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