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ソニーコンピュータサイエンス研究所所長 北野宏明

ソニーで初代AIBOなどの開発に携わり、現在はソニーコンピュータサイエンス研究所の代表取締役兼所長を務める北野宏明。日本のAI研究をリードしてきた人物で、同時にシステム工学的視点から生命の仕組みを理解する「システムバイオロジー」の第一人者でもある。



そんな北野は、8月22日に発表される「30 UNDER 30 JAPAN」でヘルスケア&サイエンス部門のアドバイザリーボードを務める。物理学からコンピューターサイエンスへと領域を広げ、アメリカのカーネギーメロン大学に。そこで世界で初めて音声翻訳システムを開発するなど、激動の20代を過ごしている。



北野自身が振り返るUNDER30時代とは? 彼は何を原動力に、様々なジャンルで研究を続けてきたのか。もしもいま20代に戻れたら、一体何をするのだろうか。

物理学からコンピューターに興味が移った20代

20代は、コンピューターサイエンスに没頭していた時期です。大学では物理学を専攻していましたが、コンピューターサイエンス、特にAIの領域に興味を持ち始めました。NECに就職した後、20代後半はアメリカのカーネギーメロン大学(以下、CMU)でAIや並列計算機をつくっていました。その後、30代になってからバイオロジーの研究を始めました。



小学校の時から色んなものをつくるのが好きだったんです。秋葉原で部品を買ってきて、電卓やアンプとかをひたすら組み立てていた。しかし、大学ではより本質的なことを学ぼうと思い、物理学を専攻することにしました。特に、素粒子理論に興味があった。時空間と物質の物理学、生命、そして知能が分かれば、この世の中の基本が分かるだろうと思っていた頃です。卒論は、日本語にすると「虚数質量を持つ素粒子の量子場の理論」でした。



大学の時は、物理とは別に、大学にあったIBMの大型コンピューターを使ったり、IMSAIというボードコンピュータ、NECのPC-8801/9801やApple-IIcなどを使いました。PC-9801では、OSをCP/Mにして、そこでCやLisp, Prologを使っていました。そこには「なんでもあり」の面白さがあった。ここだったら相当面白いことができるのではないかと思い、どんどんのめりこんでいきました。



物理学はしっかり体系化されている分野で、いまやっていることが50年後に検証されることだって珍しくない。だけど、コンピューターサイエンスは物理学に比べれば非常に若い学問です。さらに、ソフトウエアは、つくってその場で結果が出る。物理学とは時間のスケールが違いすぎるけれど、それが面白かった。


大学卒業後は、NECに入社しました。この頃のNECはいまでいうグーグルのような存在。コンピュータと通信の融合を推進するC&C(Computer and Communication)を掲げていました。日本の理系就職での人気は一番でした。大学院なら後からでも入れるけど、当時の大企業は、新卒で無いとなかなか入れない。新卒という機会を最大限利用するならここだろうと思って就職したんです。

しかし、国際基督教大学(ICU)での生活に慣れてしまっていたので、NECの入社式は衝撃的でした。行ってみたら、全員が日本人で、同じようなスーツを着ていて、たばこを吸っていた。これは、自分には合わないと思いました。

NECでは、ソフトウエア生産技術研究所で、ソフトウエアの品質管理や生産支援システムの開発をやりました。しかし、AIをやりたかったので、4年ぐらいしたときに、米国のカーネギーメロン大学(CMU)に行くことにしました。


世界を変える人たちが集まる場所

CMUでは主に音声翻訳AIを研究しました。一時期、アルバイトで通訳をやっていたので、同時通訳をコンピューターにやらせてみたかった。一文ごとに入力を理解してからターゲットの言語で訳文を生成していたのでは同時通訳にはならないです。

それと文法規則で、文章理解する方式もちょっと違うなと思ったので、大規模な文章データベースを使って、並列計算機上で高速処理をする方式を研究しました。最後は、並列マシンから音声翻訳システムまで、フルスタックの開発をしました。



CMUでの生活は、まさに人生のターニングポイントでした。日本にずっといたら、僕の人生は全く違っていたはずです。研究生活はほぼアメリカで始めたようなもの。スキルとして学んだこともたくさんありますが、何よりそこで築いた人的ネットワークに影響を受けています。



文=野口直希 写真=帆足宗洋(AVGVST)

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