もっとも明らかな改良点は、静粛性というかNVHだろう。構造や吸遮音材の改良で、室内は格段に静かになり、高速で走っても普通の声で会話できるようになった。
新しいラダーフレーム構造のシャーシは剛性が50%上がり、3リンクのリジッドアクスル式のサスはオフロード、オンロードどちらでの走行にも対応できるようにチューンされている。その結果、 素晴らしい乗り心地となっている。
オンロードでの性能も大きく進化している。これまでは上下動、横揺れ、跳ねがあったが、新ジムニーでは直進安定性がよくなったのでコーナーでも車体がフラットに保たれ、路面からのショックを吸収し、ピッチングに抵抗する。全体的なコントロールは素晴らしい。ブレーキ反応も旧型に比べてよりグリップがよくなり、ノーズダイブも少なくなった。
市街走行ではライバルとなる車種を、あきらかに圧倒するのはオフロードでの性能だ。僕が試乗したコースでは、ぬかるみもダートも、35度の斜度があっても、新ジムニーはモノともしなかった。もっとラフな路面であれば必要になる4Lのロー・レンジにシフトするまでもなく、まるで小さなトヨタ・ランドクルーザーのようだった。
モーグルコースでも難なく乗り越えなれるのは、スズキがブレーキLSDと呼ぶ機能のおかげだ。例えば、片輪が浮いた時、そのホイールが空転しないように、即座にBLTCが働き無駄なトラクションを反対側のホイールに送るから、問題なく走り続けられるのだ。
室内も、新ジムニーはよりモダンに、ダイヤル類は大きく見やすくなっており、インフォテイメント・システムはイグニスに搭載されたそれに近くなっている。
使用されている素材やプラスティックも上質になり、シートの上下が動かせないにしても座り心地もよくなった。助手席の乗降グリップなどオフロード車らしいパーツも忘れられていないのが楽しい。
視認性もとてもよく、もちろんクルーズ・コントロールや、ブレーキ・サポート、車線逸脱警報などの安全機能も備えられている。20年という時を経て誕生した4代目ジムニーは、間違いなくこれからまた何年も多くの人が欲しがり続ける小さくもタフな4WDだ。
国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
「ライオンのひと吠え」 過去記事はこちら>>