石山洸社長が率いるエクサウィザーズは2017年10月に、DeNA(ディー・エヌ・エー)元会長の春田真が率いたエクサインテリジェンスと静岡大学発で石山がCOOを務めていたデジタルセンセーションが統合してできた企業だ。
同社が現在、注力しているのは認知症患者などの「介護」領域だ。そのひとつが「ユマニチュード」と呼ぶフランス生まれの認知症ケア手法を伝承するためAIを活用したインストラクター教育を行っている。
ユマニチュードは介護する人の目線や話し方、スキンシップなど、どのように認知症患者に関われば認識されるかを細かく体系化している。認知症介護の現場では、熟練者のスキルが必要不可欠。AIを使ったコーチングで人材難の解決を狙う。
そして同社が「社会変革KPI」として提示しているのが、介護費の削減。「25年に20兆円に膨らむと言われる中、16兆円に削減したい」(石山)。
そのためによい介護とは何かをデータで明らかにすること、AIによる患者の病状推移予測をし、介護度の進行を遅らせることも目指している。
こうした壮大なビジョンの実現に向けて、エクサウィザーズ独自のビジネスモデルと言えるのが「5階層のインクルージョンモデル」だ。
(1)大学、研究者、(2)AIエンジニア、(3)介護士、看護師、(4)データや実証実験の場を提供する大企業、(5)自治体、行政─、これら全領域を巻き込んでいくビジネスモデルで進めている。
「静岡大学と大阪大学で教授を兼務している社外取締役フェローの竹林洋一は、『みんなの認知症情報学会』を設立しています。当事者とともに学会運営をし、当事者のフィードバックを大事にしている。介護費が下がってもQOL(生活の質)が上がらなかったら意味がないです」(石山)
社名にあるウィザードは魔法使いを意味する。AIが得意なプログラマーのことをいうのだが、「介護の達人もウィザード。5階層の多様なウィザードたちが協力してAIで社会課題を解きにいこうと、10の18乗のウィザードを意味するエクサウィザーズという名前にしたくらいですから」