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2018.08.16 07:30

「石の上にも3年」の呪縛から脱する、正しい判断軸の作り方

jamesteohart / Shutterstock.com

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「石の上にも3年」

これは昔から聞き慣れたことわざで、忍耐や継続に美学を見出す日本社会では、事あるごとに引用される言葉だろう。その頻出シーンとしてまず浮かぶのが、就職したての若者に向けた餞(はなむけ)だ。

「どんなに冷たい石でも、3年座り続けたらあたたまる。同じように、仕事も、少しやってみて自分に向かないと思っても、3年は続けなさい」

社会人の先輩から、そんなアドバイスを受けたことがあるという読者もいるはずだろう。しかし、私はこのロジックには、少々異論がある。

何事もやってみなければ分からない。やってみて「向いていない」「これはどう努力しても夢中になれない仕事だ」と感じ、明確な判断基準に基づく“辞めたい理由”が見つかるのならば、無理に残る必要もなく、できるだけ早く出直した方がいい。

人生は一度きりしかないのだから、自分が納得できる道にチャレンジし続ける気持ちが大切だ。

“辞める理由”が明確に見出せない場合、「もしかしたら、努力次第で感じ方が変わるかもしれない」と思える場合は、もう少し試してみてもいい。ただし、その試行期間に「3年」も必要かといえば、そうとも限らない。

この「3年」という期間に、私はどうしても根拠を見出せないのだが、「3回」という表現ならば腑に落ちる。すなわち、トライ&エラーを3回繰り返す、という実践はぜひやった方がいいと思っている。

ワンセットの仕事をまず1回やってみる。初めてだから、うまくできないのが当たり前として、1回目の経験に基づいて、2回目には新たな工夫を加えた準備ができる。この準備の成否をさらに振り返って、再トライできるのが3回目。

この3回クールを回せば、仕事の向き不向きや、その仕事を楽しめそうかどうかは大体分かってくるはずだ。スキルが身についてくるのも、同じ仕事を3回経験した頃。「石の上にも3回」という論には大賛成である。

では、なぜ「3年」という区切りを、私たちは鵜呑みにしやすいのか。

おそらく理由は単純で、「語呂がいい」とかそういうレベルではないか。あるいは、中学や高校のカリキュラムを“卒業”するのも3年だから、物事を習得するのに3年が必要であるという思い込みがあるかもしれない。

さらに考えていくと、そもそもこのことわざの「3年」が、「3回クールを回す期間」という意図で使われていた可能性も高いのではないか。

戦後の高度経済成長期を支えたのは、製造業中心だった。製造業では生産計画が1年単位で組まれることが多く、すなわち、「ワンセットの仕事を経験する単位」が1年である企業が多かったはずだ。四季が分かりやすく一回りする日本の風土も、何事も「1年単位」で考えやすい一因である。
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文=中竹竜二 構成=宮本恵理子

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