予告編から「客入り」を予測 人工知能が映画製作の助けに?

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映画をみるとき、本編と同様についつい見入ってしまうものがある。映画の予告編である。映画館にしろ、DVDにしろ、予告編を見て次に見る作品を選ぶ(もしくは選ばされてしまう)視聴者も、きっと少なくないはずである。

そして、その予告編に関するテクノロジーは、日々、発展を遂げている。米国では、予告編のみを分析して観客層と好まれる映画の傾向を予測する人工知能が開発され、話題となっている。

誰がどんな映画に興味を持つか、映画制作関係者が事前に知ることはとても難しい。最近では、なんとなく「強い女性が登場するスパイもの」が増えてきたような気もするが、そのように売れ線に絞って量産していくのにも限界がある。

映画会社20世紀フォックスの開発チームは、予告編を解析するだけで客入りを予測できるシステムを開発できないかと考えた。開発チームはまず、数百編の映画の予告編の最初の100フレームを分析することから出発。

その数が徐々に増え、68万フレームの分析を超えたあたりで、開発を進めていた人工知能が映画に登場する人の顔や事物などの要素を区別し始めたという。最終的に、人工知能は自らの基準を持って、映画の予告編から類似性や相違点を判断するまでに至った。

次いで開発チームは、学習させた人工知能の予測能力を実験するため、50本の映画に対して調査を実施。結果、人工知能は予告編だけで、とある映画を見た人々が、ほかの映画も見にいくかどうか70%の精度で見抜くことに成功したという。

米エモリー大学経営学科のDavid Schweidel教授は、メディア「New Scientist」のインタビューに対し、「アルゴリズムは、直感的に相関性があまりないように見える観客の関係も見つけた。とても興味深い」と話している。

たとえば、人工知能はヒュー・ジャックマンが主演した『グレイテスト・ショーマン』を見た観客の多くが、米国航空宇宙局(NASA)で活躍した黒人女性科学者を描いた作品『ドリーム』も見たという分析結果をはじき出したが、「そのような意外な(関係性の)洞察は、今後、映画製作に大きな助けになると」と指摘している。

一方、スタンフォードシャー大学映画科のPeter Rudge教授は、人工知能の活用は限定的になるのではと懐疑的だ。というのも、最近では映画がつくられる前にマーケティング戦略が決定する場合が多く、人工知能を使って予告編やマーケティングプランを変更するとういうようなケースはあまり多くないはずというのがその根拠という。

文=河鐘基

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