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2018.07.12

人には強みも弱みもない、あるのは「特徴」だけだ

SFIO CRACHO / Shutterstock.com

順調なキャリアを歩むために“強み探し”は重要である。これはよく言われていることであり、私もまったく異論はない。他者との差別化ポイントを自分自身がよく分かっていることは、心地よく無理なく人生を楽しむために必要な戦術だ。

ただし「強みはいつでも弱みに転換される」ということは覚えておいたほうがいい。つまり“絶対的な強み”などはないのだ。

例えば、「一途にやり抜く力がある」ことがあなたの強みだとする。しかし、これは裏を返せば「融通が利かない」とも表現できる。
 
要は、強みとなるか弱みとなるかは、“結果次第”なのであり、結果さえうまくいけば「実に粘り強くやり続けたからこその成果だ」と讃えられ、失敗すれば「頑固にこだわり過ぎるから」「まったく視野が狭い」と一蹴される。結果いかんによって、180度違う評価をあなたは受けることになるだろう。

本人としてはまったく同じことをやっているだけなのに、結果次第で世間の評価がまったく変わる、といった現象は、ビシネスの場であっても、スポーツの世界でも日常茶飯事だ。あるいは、「仕事の仕方を変えていないのにもかかわらず、上司が変わった途端、評価が変わって戸惑った」といった経験をした人もいるのではないか。

戸惑う気持ちもよく分かる。ならば、こう考えたらいい。人には強みも弱みもない。あるのは“特徴”だけだ、と。

「一つのことに集中して継続する」という特徴が、結果次第で強みにも弱みにもなるのだと覚悟しておけば気がラクになる。ハイパフォーマーと言われるトップアスリートやビジネスリーダーたちは、そもそも「結果」を気にせず「今」に集中している。

この事実をあらかじめ知っておくだけで、周りの評価に左右されない心の静けさを保つことができる。逆にこのことを知らないままだと、いつまでも外野の声に振り回され、消耗されていくだろう。要するに、結果によって評価がコロコロ変わるのは他人であって、自分の軸は変えてはいけない。

強みは弱みであり、弱みは強みである。この相互の行き来を、脳内で瞬時に転換できるトレーニングはぜひお勧めしたい。

会社の研修やストリングファインダーなどといった書籍などを使った自己研鑽の機会で、自分の強みを発見する機会を持つことがあれば、「強みを知れてよかった」と浮かれて終わるのではなく、「この強みを弱みに言い換えるとどうなる?」と思考を進めてみよう。

自分の弱みとして認識し、コンプレックスに感じていることがあれば、見方を変えて強みの表現に変えるトライをしてみてほしい。

自分の特徴を強みにも弱みにもとらえられるニュートラルな感覚を身につけられると、他人から弱点を指摘された時にも傷つかなくなる。

「お前はいつも飽きっぽいし、やることがコロコロ変わるな」と言われたら、頭の中で「正解!たしかにそのとおり」と受け入れよう。「飽きっぽい」という弱みは、「好奇心が強くて新しいことへの挑戦をいとわない」という強みとも同義である。

弱点を突かれると、つい動揺したり、「どうしてそんなことを言うのか」と相手に腹を立てたりするかもしれないが、そもそもそれが単なる特徴に対する指摘だと認識し直せば、受け入れ方は全く違うはずだ。「よく分かりましたね。本当にそうなんですよ」と、図星であればあるほど、面白がれるようになれば上級者だ。

こういった耐性は、持って生まれた性格に依存するわけではなく、思考のトレーニングさえすれば誰にでも身につけられるということを私は言いたい。同じ事象に対して、いろんな認識パターンを持てることが、様々なピンチを乗り切る強力な武器になるのだ。

連載:自分自身の育て方
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文=中竹竜二 構成=宮本恵理子

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