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ドクター本荘の「垣根を超える力」

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電気自動車、自動運転、ライドシェアと、現在も進行する「交通革命」の話題が盛んにメディアでも取り上げられていますが、どちらかというと技術面であるとか、供給サイドの考え方ばかりがクローズアップされている印象です。

もっとユーザー目線に立った、楽しい移動手段としてクルマの未来を語る議論は、あまり見かけることはありません。果たして、電気自動車や自動運転が、人とクルマの関係にどんな変化をもたらし、その結果、私たちのライフスタイルはどんなものとなっていくのか、とても気になるところです。

京都大学大学院情報学研究科同窓会(通称「京大情報学同窓会」)が主催している 「超交流会」は、誰でも参加できるオープンな交流イベントですが、先の6月16日に行われた「超交流会2018」で、私はデンソーMaaS(Mobility as a Service)開発部長の成迫剛志さんと「交通革命、その先」と題したトークセッションを行いました。


筆者(左)とデンソーMaaS開発部長の成迫剛志氏(右)

会場に集まった参加者とともに、そもそも人はなぜ移動するのかという根源的な問いから始まり、さらに私たちが望む新しいクルマのカタチにまで議論は及び、あくまでもユーザーサイドに立ったインスピレーションに富んだ意見がたくさん出ました。

人は、なぜ移動するのか?

クルマの専門家である成迫氏が会場を埋め尽くした参加者にこう問いかけました。

「無人の自動運転車で、無人の店舗に行ってショッピングして、また無人のクルマで自宅に戻る。こういう生活したいですか?」

参加者の8割以上の答えは「NO」でした。「それでは味気ない」「だったら通販でいい」といった声も上がりました。

音楽プレーヤーでひたすら機能を追求したソニーがiPodのアップルに負け、あいかわらずスポンサー側の都合で番組を垂れ流す地上波テレビはコンテンツ重視のネットフリックスなどの配信業者に主導権を取られる、そういった例を挙げながら、「生活がどう変わるかというユーザー目線がないと、プロダクトはつまらなくなる。このままだとクルマも同じことになる」と指摘します。

単なる移動手段の合理化ということではなく、それを享受するユーザーのハピネスに目を向けていかないと、できあがったものは魅力のないものになるし、結局、大きな市場ニーズも逃してしまうのです。

さらに成迫氏は「人はなぜ移動するのか?」と会場の参加者に問いました。成迫氏によれば、人は人に会って情報をやりとりするために移動するのです。

例えば、テレビ会議よりも実際に対面したほうが得る情報量は上回るといいます。また小さな子供は、画面を通してより実際に話しかけたほうが、言語の習得が進むそうです。

人はより深い情報を求めて人に会いに行く。目を見ながら、膝を突き合わせて話し込みたい、触れ合いたい。恋人には会いに行きたいものです。心理や感情は、人の行動を動かす大きな要素ですが、移動するということは、まさにこの人間の根本的欲求に深く関わるものなのです。

だから便利な移動手段であるクルマも、この人間の根本的欲求に応えるかたちで開発していかないことには、将来的には見捨てられてしまうものになる可能性もあるということです。

文=本荘修二

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