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シネマの女は最後に微笑む

映画『フローズン・リバー』のコートニー・ハント監督(左)とヒロインを務めた女優のメリッサ・レオ(右)

6月11日、629人のアフリカ系移民を乗せて地中海で立ち往生していた「アクアリウス号」の入港を、スペインのサンチェス首相が認めた。アクアリウス号は、国境なき医師団とドイツの慈善団体「SOSメディテラ」が運営する船舶で、6回に渡ってゴムボートから移民を救助したが、イタリアやマルタで受け入れを拒否されていた。

他方アメリカでは17日、テキサス州のメキシコ国境から80キロの地点で、不法入国者らを乗せた車が警察に追跡されて横転し、外に投げ出された人のうち少なくとも5人が死亡した。

世界情勢の流動化にともなって増加している移民たち。移民には、戦争を逃れた難民やより良い生活を求めて移動する「経済難民」が含まれるが、受け入れ側の対応はまちまちだ。不法滞在者として退去強制処分が出されることも多い。

そんな外国人を収容する日本の法務省入国管理局の施設で、4月13日、インド国籍の男性が自殺した。2006年以降、同施設内の自殺者は4人目。合理的な理由のない長期収容、人権を無視した処遇、劣悪な医療環境が、収容者の自殺や病死、自傷行為を誘発しているとして、国会でも議題に上り、抗議行動が広がっている。

今回取り上げるのは、アメリカの不法移民問題を背景にしたドラマ『フローズン・リバー』(コートニー・ハント監督、2008)。サンダンス映画祭、ストックホルム国際映画祭でグランプリを獲得し、ヒロインを演じたメリッサ・レオはオスカー初ノミネートほか、数々の主演女優賞に輝いた。

プワーホワイトの暮らし

一面、雪と氷に閉ざされたニューヨーク州最北端の小さな町。新しい家が到着する日にローンの残金を夫に持ち逃げされた主婦レイ(メリッサ・レオ)が、幼い次男の面倒を長男に任せ、ギャンブルにはまって帰ってこない夫を探しに出かけるところから、ドラマは始まる。ビンゴ会場の駐車場で夫の車を見つけたものの、目の前でモホーク族の若い女性ライラに盗まれてしまう。

ライラから「友人が車を高く買う」ともちかけられたレイは、夫の車を売ってお金を作ろうと、彼女を乗せて凍ったセント・ローレンス川を渡って行くが、車買い取りの話は嘘、ライラは不法移民をカナダから米国に密入国させる裏の仕事を請け負っていた。

レイが白人であることから警戒するライラの仲間、トランクに身を隠す中国人、渡される紙幣の束、再び渡る氷の大河、国境警備の目を逃れてモーテルに着くと、移民は降ろされまたお金が渡される。

騙され片棒を担がされたレイはライラを責めるものの、結局はお金のために、危険な裏の仕事を手伝うことになる。パートをしている1ドルショップでは、正規従業員への昇格嘆願は無視されているし、まだ15歳の長男に仕事はさせたくない。

粗末な家には、レンタルしているテレビや古い化粧品の並ぶ棚、食事はポップコーン‥‥貧困に直面している白人の労働者階級の暮らしぶりが描かれる。

レイの体のあちこちにあるタトゥー、顔に細かく刻まれた皺、安物の伸び切ったニットは、プワーホワイトとして生きてきた中年女性の半生を物語っているかのようだ。

文=大野左紀子

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