調査会社「Newzoo」の資料ではNetEaseは売上高で世界6位のゲーム企業だ。しかし、同社の売上の主力はモバイルゲームであり、PCゲームではない。また、モバイル部門の売上の主軸はアンドロイドではなく、iOSアプリとなっている。
NetEase幹部のSimon Zhuは「直近の四半期の売上は80億元(約1400億円)だった。詳細は明かせないが、その大半がiOSアプリからのものだった」と述べた。筆者は先日開催された、アップルの開発者会議「WWDC」の会場でZhuに話を聞いた。
NetEaseはインターネットサービス企業として1997年に設立され、2001年に中国企業としては最も早い時期にオンラインPCゲーム事業を開始した。しかし、過去5年ほどの間でiPhone向けのモバイルゲーム部門が急成長を遂げた。
今年のWWDCでアップルは、iOS 12に導入する新機能の説明に多くの時間を割いた。筆者が個人的に気に入ったのは、アンドロイドでは当たり前になっていたグループ通知機能がようやくiOSに導入されることだ。また、他の開発者たちは、Siriから直接アプリを起動させるショートカット機能の導入を歓迎していた。
しかし、NetEaseが期待を寄せるのは、AR機能を強化する「AR Kit」の第2世代バージョン(AR Kit 2.0)であり、これがゲーム業界に革新をもたらすという。
「昨年、アップルがAR Kitを発表した時、衝撃を受けた。それまでは、ARには専用のARグラスなどのデバイスが必須だと思われていた。だが、アップルが提示したのはどんなiOSデバイスでも、AR対応にできる画期的アイデアだった。一夜にして巨大な市場が生まれたと思った」とZhuは話した。
自宅に居ながら「宇宙」を体感できる
NetEaseは7000名以上のゲーム開発者を抱えており、これは世界最大規模だという。同社はそのリソースを一気にAR Kit関連に注ぎ、「Yume」というARパズルアプリを開発。高い評価を得た。
新バージョンのAR Kit 2.0にはマルチプレーヤー対応や顔の追跡といった新機能が盛り込まれており、Zhuはこれでさらに新たなゲーム体験が提供できると見込んでいる。
「これまでは、ゲーム体験の向上には新たなハードウェアが必須だと思われていた。しかし、アップルはソフトウェアのアップデートのみで、それができることを証明した。AR Kit 2.0の発表に、非常にエキサイトしている」と、Zhuはいう。
今回の発表は、NetEaseにとって絶好のタイミングだった。同社は先日、「CCP Games」と提携したばかりで、非常に人気の高いMMO(多人数参加型オンライゲーム)ゲームの「EVE」のiOS版の開発を進めている。そこで重要な役割を果たすのがAR機能なのだ。
「EVE: Project Galaxy」と名付けられたそのゲームはAR Kit 2.0のパワーを借りて、自宅にいながら巨大な宇宙を体験できるようになるという。
Zhuは今回のBungie社との提携の詳細については回答を避けた。「しかし、一つだけ確かなことは、我々はPCゲームをモバイルに対応させる事業で、多くの成功を収めてきたということだ」と彼は話した。