貿易戦争の影響
トランプ政権は5月31日、欧州連合(EU)とメキシコ、カナダから輸入する鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課すと発表した。これを受け、これら各国は米国への報復措置を講じる方針を明らかにしている。また、トランプは5月末、中国製品に対する追加関税の発動についても言及している。
ダラス連邦準備銀行は4月、米国が鉄鋼とアルミニウムに対して輸入関税をかけた場合の経済的コストに関する見通しを発表。直接的な影響として、長期的には米国の国内総生産(GDP)を約0.25%低下させるとの見解を示している。
報復措置がもたらす痛み
米国産の鉄鋼は20%以上値上がりし、生産コストも上昇すると見られる。また、生産性は全体として3%以上低下すると予想されている。生産量は15%以上増える一方、輸出量は5%減る見通しだ。
だが、こうした影響以上に米国に大きな痛みをもたらすのは、各国の報復措置だ。ダラス連銀は、EUと中国との貿易戦争は、長期的に見て米国の経済成長率を3.5%近く引き下げると推測している。
トランプは自らの望みをかなえるかもしれない。対中貿易赤字を解消できる可能性はある。だが、同時に米国の生産性は、EUと中国との貿易戦争の影響だけでも1.65%低下すると見込まれる。
労働力の供給源の今後
トランプは不法移民の取り締まり強化のほか、合法的な移民の受け入れ削減を目指している。これらの短期的な影響は、人手不足だ。長期的には、人口が急速に高齢化する米国において、新規労働力が急減することを意味する。
米調査会社マクロエコノミック・アドバイザーズの幹部はCNBCテレビに対して3月、米国経済は2%の成長が見込めるとの見方を示すと同時に、それは労働力人口の増加と生産性の上昇率によるものだと指摘した。現在の人口増加はその半分近くが移民に依存したものであり、2045年までの労働力人口の増加の80%は、外国人労働者によるものだという。
米国を「再び偉大に」する?
ホワイトハウスは移民に関して今年1月、新たな提案を公表した。米シンクタンク、ケイトー研究所によれば、この内容に従えば米国への合法的な移民は、向こう50年間にわたって毎年およそ50万人(約50%)減少することになる。
シンクタンクのタックス・ポリシー・センター(TPC)は、TCJAは2018年の経済成長率を約0.8%引き上げる効果があると見積もっている。これは主に、新たな法律が短期需要を押し上げるためだ。だが、経済面でのメリットは時間の経過とともに減少し、TCJA の経済成長への影響力は10年後にはなくなるという。
貿易と移民に関するトランプの政策の悪影響を考慮すれば、TCJAがもたらす恩恵の大半は短期的な効果も含め、ほぼ全て消えうせてしまうことになる。移民に関するホワイトハウスの案は、長期的には米経済に実質的な悪影響を及ぼすものだ。「米国を再び偉大に」することは、まずないと考えられる。