電子書籍の2018年第1四半期の売上が3.2%減少した中、オーディオブックは廉価版のペーパーバックよりも売れている。この状況は米国の出版業界がデジタル・オーディオブックに底支えされていることを示している。出版業界はここ数年、売上を何とか維持するために試行錯誤を繰り返している。
出版社の「ハーパーコリンズ」はダウンロード形式のオーディオが2018年第1四半期にデジタル関連の売上の25%を占め、前年同期比5%増だったとしている。出版系ニュースサイト「Publishers Weekly」によると、「サイモン&シュスター」CEOのCarolyn Reidyも、デジタル・オーディオの売上が43%も上昇し、売上をけん引していると発言した。
オーディオブックの人気が上がっていることは、出版業界がポッドキャストで成功していることに密接な関係がある。「マクミラン」社の「Steal the Stars」や「マーベル」の「Wolverine: The Long Night」がその例にあげられる。
一方で、ベストセラーや書籍以外の売れ筋商品に頼ることの危険性も指摘されている。大手書店「バーンズ・アンド・ノーブル」は2017年の業績に関し、「大人向けの塗り絵本ブームが去り、アデルのアルバムのような売れ筋アイテムがなかったことが、売上減少の主要因の一つとなった」と説明していた。
オーディオブックの人気は今後も続いていくかもしれない。スマートスピーカーのような新たなテクノロジーが、その人気を支える可能性もある。しかし、恩恵を受けるのが出版社であるとは限らない。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じた通り、アマゾンの関心は書籍からオーディオブックに移っており、今後はアマゾンがオーディオブックの売上の大半を獲得する可能性もある。
出版社は次のトレンドを予測するのが苦手で、それまでのトレンドの後追いに注力することが多い。例えば大人向けの塗り絵本ブームの次には、点と点をつないでイラストを完成させる本(Connect the Dots Booksと呼ばれる)が来ると予測したりする。
今後の出版界にとって大きな問題は、持続的な人気を獲得するコンテンツの発見が困難なことだ。2015年には「アラバマ物語」で知られるハーパー・リーの「さあ、見張りを立てよ(GO SET A WATCHMAN)」がベストセラーとなり、大人の塗り絵本ブームも起きたがその人気も長くは続かなかった。しかし、2018年に限っていえばオーディオブックが出版界の希望となっているようだ。