ただし、ここで言う「電子書籍」とは既存の大手出版社が発行する電子書籍であり、インディー系の出版社がアマゾン等で配信しているものは含まれていない。
米国の電子書籍市場の落ち込みは、真新しいニュースではない。「ニールセン」の2016年のデータでは、米国の上位30社の電子書籍売上は前年度から16%の落ち込みだった。その背景には、2015年に米国の大手5社が、電子書籍の販売価格を8ドル程度まで引き上げたことがあげられる。これは、3ドル程度で売られるインディー系作品と比較すると非常に高い価格設定だ。
2017年に最も売れた電子書籍は、Huluで大ヒットしたドラマ「侍女の物語」の原作(マーガレット・アトウッド著)だった。また、ダン・ブラウンやジョン・グリシャムといった有名作家の著作も売れた。さらに、トランプ政権誕生以降の米国の状況を反映して注目を浴びた、J・D・ヴァンスの「ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち」や、ジョージ・オーウェルの「1984」なども上位10タイトル圏内に入った。
しかし、ここで注目すべきはアマゾンのキンドルプラットフォームで配信される、インディー系電子書籍が大きく売上を伸ばしていることだ。ジェフ・ベゾスは4月の株主向け公開書簡で、キンドルのプラットフォームから10万ドル以上のロイヤリティを獲得した著者が、累計1000名を突破したと発表した。
ニールセンのデータでは2012年から2015年にかけて、米国の大手5社の電子書籍の市場シェアは12%縮小した。その一方、小規模出版社やセルフパブリッシング作品の市場シェアは23%拡大していた。
2017年の「Author Earning」のレポートによると、大手出版社のこの分野での苦戦はまだ続いていきそうだ。Author Earningによると、米国の電子書籍売上の80%近くがアマゾンからもたらされているという。