ビジネス

2018.05.28

「次から気をつけます」は「改善」ではない──アマゾンのPDCA管理術

『アマゾンのすごいルール』著者 佐藤将之

日本の労働生産性が低いのは、労働者ではなく企業の仕組みに原因がある──。佐藤将之はそう語る。そう言い切れるのは、彼が17年にもわたって超効率的な職場で仕事を続けてきたからだ。

佐藤はアマゾンジャパン17番目の社員として2000年から同社の成長に貢献。その内実を公開した『アマゾンのすごいルール』(宝島社)は、アマゾンのビジネス書「企業動向」カテゴリで売り上げ1位にも輝いた。

PDCAを回し尽くすアマゾンの圧倒的な働き方。その真髄はどこにあるのか。2回にかけてお送りする。



愚直にPDCAサイクルを回し続けたから、成長できた

──日本の会社とアマゾンジャパンの働き方で、一番違いを感じた点はどこでしょうか。

「数字」に対する意識ですね。アマゾンでは社員のあらゆる行動を「メトリックス(KPI)=数字」によって測り、徹底したPDCAサイクルを回しています。

──数字による管理とPDCAサイクルは、多くの日本企業でも重視されていますが……?

Amazonの場合、きちんと「確認(Check)」がなされるから、本当にサイクルが回るんです。私が見た限り、日本企業の多くはPDCAの「確認(Check)」と「改善(Act)」がおざなりになっています。

これは評価される人材の定義が、日本の企業とアマゾンでは全く異なるからです。

日本で評価されるビジネスパーソンの多くは、「計画(Plan)」と「行動(Do)」に長けている、つまり綺麗な計画書を書いて周りに作業を振るのが上手い人ですよね。ですが、それをカタチにする下請けの作業はブラックボックスになっており、ブラック労働の温床になっています。

アマゾンで評価されるのは、PDCAサイクルを高速で回し、「数字」で結果を出せるメンバーです。社内のあらゆる要素が数値化されているのは、「改善」を効率よく繰り返すためにほかなりません。

全ての仕事は、「y=f(x)」で表現できる
 


──とはいえ、「確認」と「改善」の仕組み化は簡単ではありません。チェックリストなどを用意しても、最終的には上司から作業者に「これからは気をつけろよ」と注意喚起して終わりになってしまうことも多いですよね。どうすれば意味のある「確認」を徹底できるのでしょうか。

アマゾンでは上司が部下に、失敗した理由と具体的にどのような対策をとるのかを必ず尋ねる習慣があります。PDCAサイクルが機能していない企業は、この「確認」が形骸化しているのではないでしょうか。とりあえず部下を問い詰めるだけ問い詰めて、「次は頑張ろう」と励ますだけでは、「改善」につながりません。

私は、全ての仕事は関数「y=f(x)」で表現できると思っています。私が最後の10年に担当していたフルフィルメントセンター(倉庫)でのオペレーションを例に挙げると、売り上げや倉庫内での事故件数や誤発送件数、返品件数といった大きな目標が「y」として表されます。
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文=野口直希 写真=小川哲汰朗

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