台湾出身の徐は、4歳のときに家族とニューヨーク市クイーンズ地区に移住。2006年に経済学の学位を取得後は軍に入隊した。歩兵隊将校として4年間過ごした経験は、彼を変えた。1年間はイラクでの任務に就き、小隊を率いて巡回や急襲を行ったり、イラク人起業家らと協力してティクリート近くの小さな町に無線局を作ったりした。「自分とかけ離れた経歴を持つ人々と会った。人材はどこにでも存在するが、機会はそうではない」と徐は語る。
ニューヨークの実家に戻った徐は、ある非営利活動のアイデアを思いつく。クイーンズで、才能はあるが恵まれない労働者を支援し、低賃金の仕事から高給なテック職への転職を支援するものだ。
徐の設立したC4Q(Coalition for Queens/クイーンズのための同盟)は、他のプログラミング講座と同様、アップルやアンドロイドのオペレーティングシステム(OS)向けアプリ構築法や、ウェブ開発に関する集中講座を提供している。だがゼネラル・アセンブリ(General Assembly)などの非営利プログラミング学校とは違い、寄付金を基盤とし、講座は無償だ。
プログラムに参加する条件は、18歳以上で年収が4万ドル(約440万円)以下であること。特に、公営住宅に住んでいる人や、学校で昼食の無償化や割引の措置を受けていたような金銭的に困窮した人たちを重点的に支援している。
大半のプログラミング学校では、講座はたった3カ月だが、C4Qのプログラムは10カ月間続く。また、講座の3分の1は履歴書の書き方やネットワーキング(人脈作り)、お礼のメッセージの書き方、チームワークやプロジェクトマネジメントなど、プログラミング以外のスキルに割かれている。
C4Qは、卒業後も受講者を支援している。徐は複数の会社に、講座の卒業生を雇用するよう強く求めてきた。また、徐はリンクトインに対して、大学の学位を採用要件から外し、C4Q卒業生のために6カ月の見習い期間を設けるよう説得。この見習い期間プログラムは、これまで何千人もの採用につながっている。