アフガニスタンでは大統領選が行われたばかりで、選挙不正が疑われる地域を地図にプロットすることがガンダーセンの任務だった。膨大な量の投票記録は全てPDF化されており、彼は必要なデータを抽出して可視化するのに苦労したという。
グーグルのストリートビューは既に存在したが、カブール市内の大半が空白だった。「まるでウィキペディアが作られる前の世界にいるようだった」とガンダーセンと当時を振り返る。彼らは前年に独自開発した地図サービス「Mapbox」を使って地図を作製したという。
それから9年が経ち、現在では毎月3億5000万人が何らかの形でMapboxのサービスに触れている。同社は「スナップチャット」や「ウェザーチャンネル」、フィットネスアプリの「Strava」「テスラ」「リフト」「ウーバー」などに地図を提供している。また、食料品配達アプリ「Instacart」はMapboxのサービスを使って配達予想時間を顧客に提供している。
Mapboxはこれまでに投資家から2億3000万ドル(約251億円)を調達しており、昨年10月に行われた直近ラウンドでの評価額は7億ドルに達した。今年は売上高が1億ドルに到達する見込みだが、黒字化はまだ先の話だ。
現状の課金ユーザー比率は3%に過ぎず、同社は自動運転車やAR(拡張現実)向けに地図サービスを提供して黒字化を図りたい考えだ。しかし、これらの領域への参入はグーグルに真っ向から勝負を挑むことを意味する。Mapboxの強みはグーグルマップよりもカスタマイズ性が高いことだが、エンジニアの数や資金力では圧倒的な差をつけられており、厳しい勝負になることが予想される。
Mapboxは、これまで開発者に限定してサービスを提供してきた。同社は開発者が簡単に利用できるよう、ストライプやアマゾンウェブサービスのように様々なコンポーネントを組み合わせる方式を採用して幅広い企業に採用されてきた。
他の地図サービスの多くが完成された地図を提供するのに対し、Mapboxはレゴセットのようにエンジニアがカスタマイズできるのが特徴だ。フォントや配色を変更できるほか、ナビゲーションや地形情報の提供といった機能の実装が可能だ。2012年に最初の大型顧客となった「フォースクエア(Foursquare)」は、それまで使用していたグーグルマップよりも安く、柔軟性が高いことを理由にMapboxに切り替えたという。
Mapboxは無料で使用できるが、エンタープライズ仕様の場合は年間利用料が4万ドルからスタートし、テスラの場合は500万ドルとなっている。開発者にとってフリーミアムモデルの利点は、いきなり高額な契約を締結せずに、数ヶ月間無料で試すことができる点だ。