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2018.05.15 07:30

なぜ若者は170万円払って海外医療ボランティアへ行くのか?

吉岡秀人(左)、大西洋(右)


大西:東南アジアで活動を始めた頃、同じようなことをされていた方はいらっしゃったのですか? また、どうして海外で医療活動をしようと考えたのでしょうか?
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吉岡:国連や日本政府の一員として派遣され、身分も待遇も保証されて来ているような人たちはいましたが、僕のような一個人の医者で活動している人間はいませんでした。

僕はもともと海外へ行って、できるだけ多くの人々を救けたいと思って医者になりました。でも、そういうことって、当時は医局制度から外れる覚悟がある変人にしかできなかったのだと思います。僕は自分のやっていることに自信を持ち、自分の中の感覚に従えばいいという信念を持っていましたから、これまで続けてこられたのだと考えています。

大西:当時は海外を目指される医師の方は少なかったのですか?
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吉岡:当時は外国に行く、イコール、アメリカに行くことでした。開発途上国へ行くのは、常識から外れていると非難ごうごうでした。それが、今では行きたいという人たちがとても増えています。時代が追いついてきたのだと思います



「心の豊かさ」が消費のポイント


大西:やはり途上国へ医療活動に出かけるのは、ボランティアの方が多いのでしょうか?

吉岡:はい、完全にボランティアですね。医療従事者の場合は、1週間現地で医療活動をするために、活動費が7万~8万円かかる。1年間だと100万円前後を個人で用意する必要があります。その他、渡航費や保険料なども自己負担になるので、1年間医療活動に出かけようと思ったら170万円ぐらいかかります。

大西:そうですか。ボランティアというのは、自費という概念はありましたが、それだけの負担は大変なことですね。それでも、行きたいという人が増えていると聞きました。

吉岡:宿泊や食事は「ジャパンハート」が無償提供しますが、活動費は基本的に本人負担です。「お金を自分で負担するのでは持続性がないのでは?」とよく質問されることがあります。

いまのように、衣食住が足り、モノを買うことも少なくなってきた時代に、人は何にお金を投下するのでしょうか。その答えは、「自分にとって豊かな時間を持つため」だと思うのです。旅行で世界遺産巡りをしたり、演劇を見たり、趣味に没頭したり、海外で働いたり、ボランティアをしたり。このトレンドは、これからもっと強くなると思います。

大西:確かにわれわれはモノを手に入れるために働いてきたところがありました。もうモノは充足しているから、いまの人たちにとっては、心の豊かさが重要になっている。1990年代前半にバブルが弾けてからそれが始まった。けれども自分が身を置いていた小売業はその潜在ニーズに追いついていけない部分が多くありました。

吉岡:僕が初めて東南アジアに医療活動に行ったのもちょうどその頃です。

大西:バブル崩壊以来、ずっと小売業でも「モノよりコト」と言われてきました。「コト消費」イコール「心の豊かさ」であり、これが、これからの消費の重要なポイントだと確信しています。

NGOと商社が人材を奪い合う

吉岡:「ジャパンハート」では、医療活動は1週間単位で期間が選べるのですが、年間約600人の医師や看護師が東南アジアで、40~50人が国内の僻地で活動に当たってくれています。しかも、どんどん希望者が増えているので、近いうちに短期では1000人を超えてくるでしょう。

大西:多様性の時代になって、社会貢献、社会奉仕みたいなものも、大きな心の豊かさにつながる活動になってきたということですね。
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文=松下久美 写真=小田駿一 編集=稲垣伸寿

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