ビジネス

2018.05.08

収益性でアリババがアマゾンに勝つ理由

アリババ創業者、ジャック・マー(Photo by Sean Gallup/Getty Images)

インターネット通販大手のアリババとアマゾンは、いずれも適切な時期に適切なビジネスを展開している。そして、両社にはそれぞれ、株主に多額の利益をもたらしてきた独自の「成功の方式」がある。

アリババの株価は過去12カ月で63.97%、過去2年では146.15%上昇。アマゾンの株価は同じ期間に67.76%、121.44%上昇した。だが、長期的に見てどちらがより株主にとって好ましい運用実績を残すことになるのか、それは分からない。

そうした中で、両社については一つ明らかなことがある。それは、成功に関する重要な指標である営業利益率は、アリババが一貫してアマゾンを上回っているということだ。直近の四半期のアリババの営業利益率は31.25%、アマゾンは2.31%だった。

簡潔に言えば、より利益の出るビジネスモデルを採用しているのは、アリババだということだ。その理由は、電子商取引で利益を得るための両社のアプローチが大きく異なることにある。

アマゾンのアプローチは、米小売最大手ウォルマートのようなスケールメリットの享受をインターネット通販において実現しようとするものだ。ポーター・エリスマンは著書「Six Billion Shoppers」の中で、「米国でのアマゾンのアプローチは基本的に、“ウォルマート経済”をインターネット上に移行させ、規模の大きさとテクノロジーによって値下げを実現し、安く大量に売るモデルに基づいた大規模小売店をつくることだ」と述べている。そして、この方式ではごくわずかな割合ながら、利益に当たる部分を消費者が支払う代金に転嫁することになる。

一方、アリババのアプローチは、オンラインでの起業を促すというものだ。同社のネット通販サイト淘宝網(タオバオ)で商品を販売する「ベンダーが起業家になる」というビジネスモデルだ。このアプローチはある意味で、インターネット競売大手イーベイのモデルに似ている。

エリスマンは、「イーベイの手法は、“ヤードセール(ガレージセール)経済”をオンラインに移行させようとするものだ。中古品や収集品の市場を作り出す」と説明している。また、「淘宝網は新しい製品を扱う家族経営の小規模な小売店が、インターネット上に移行したものでもある」という。

これは、アマゾンよりも優れた方式だ。数百人、あるいは数百万人を起業家に変え、彼らを貧困から救い出し、そのうちの一部を豊かにすることによって、アリババにも利益がもたらされる。このモデルは、世界最大であり、米国の2倍に当たるインターネット市場を擁する中国のような国で特に効果的だ。

ただし、商品の販売に手数料がかからず、在庫を確保しておくための倉庫も必要がないアリババのモデルは、誰でも容易にまねることができる(アマゾンよりはるかに簡単な)ものだ。競争が激しい中国のインターネット経済においては、ビジネスモデルを模倣される危険性は非常に高い。新たな競争相手が次々と現れることは、営業利益率の低下につながる。

また、中国では政府の規制によって民間企業の置かれた状況が流動的になる。政府があっという間に“味方を敵に変える”こともあり得るのだ。投資家たちは極めて慎重に、各社の成功の方式を見ていく必要がある。

編集=木内涼子

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