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シネマの女は最後に微笑む

映画「ビッグ・アイズ」主演のエイミー・アダムス(右)とティム・バートン監督(Photo by Getty Images)

長年にわたりアラーキーこと写真家の荒木経惟のモデルを務めていたダンサーのKaoRiさんが、荒木氏との関係について綴ったブログの記事は、今月初め多くの反響を巻き起こした。

同意書や契約書のないまま日常のあらゆる瞬間を撮影されてきた彼女は、当初は荒木氏の「私写真」に貢献しているつもりでいたという。だが、拘束時間の増加にも関わらず、写真集やDVDが出版されても撮影時のわずかな報酬のみで、無報酬でのパフォーマンスや、勝手に部外者を入れてのヌード撮影といった理不尽な状況が日常茶飯事となっていった。

改善を求めるKaoRiさんの訴えに、荒木氏は耳を貸すことなくパワハラ的言動を繰返し、彼女は強いストレスから心身の不調に至ったことを告白している。

自分より上位に位置する男性アーティストに見出され、「ミューズ」と賞賛された女性が、尊敬する芸術家の役に立てればとの思いから、知らず知らず不当な関係性を受け入れてしまうことは、残念ながらありがちである。

当の芸術家だけでなく、彼を持て囃す業界やメディアなど圧倒的な力を前に、女性がたった一人で相手を告発するのは大きなハードルがあると言わざるを得ない。

この出来事ですぐに頭に浮かんだ映画は、ティム・バートン監督の『ビッグ・アイズ』(2014)だ。

世間知らずの女性の絵描きを偽画家の男が騙し搾取していく様を、ポップで明るい色調の中にたっぷりの皮肉を交えて描いた実話ドラマ。芸術の領域で男性が女性を踏み台にして名声を得るという構図が、アラーキーとKaoRiさんの関係を彷彿とさせる。


左からティム・バートン監督、出演者のエイミー・アダムス、クリストフ・ヴァルツ。

時代はまだ性差別が強かった1958年、マーガレット(エイミー・アダムス)は横暴な夫から逃れ、幼い娘と共にサンフランシスコに来る。絵は得意だが働いたことのない彼女は、家具会社のペイントの仕事に就き、休日は路上に、娘をモデルにした大きな瞳が特徴的な子どもの絵を並べて、似顔絵描きで小銭を稼ぐ生活に。

そこに声をかけてきたのが、パリで絵を学んだというやたら多弁で陽気な自称風景画家のウォルター・キーン。見るからにいかがわしい男だが、「すごい才能だ」と大袈裟な甘言を並べ立てる彼に、マーガレットは魅了されてしまう。

二人の関係は急速に進み、ハワイで挙式。まるで女神のように扱ってもらえる嬉しさから、マーガレットは自分の絵にキーンと署名するようになるのだが、これが後の搾取を容易にしてしまうのだ。

文=大野左紀子

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