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2018.04.09 16:30

フィンランド発!「高解像度ヘッドセット」の開発秘話

ヴァルヨのCEOで共同創業者のウルホ・コンットリ(photographs by Sabrina Bqain)


チームは試作モデルを製作し、16年11月に、毎年ヘルシンキで開かれている世界中の技術者、企業、投資家らが一堂に会する大イベント「スラッシュ」で、何人かに見せることができた。コンットリは当時を振り返って言う。
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「“きみたちが作っているのは、特別なものだ。ぜひやってみたまえ”とみんなに言われました」

コンットリらは可及的速やかに、米国での特許取得の面倒を見てくれる会社を見つけ、1000ユーロ(約13万円)の追加料金を支払って数カ月でシースルー技術関連の複数の特許を手にした。通常なら1〜2年かかるところ、並外れて迅速なプロセスだった。既存の技術を使った技術だったので、ほかに思いついた人がいなかったなんて信じられないとコンットリは語る。

「特許が承認された時、私は狂ったように叫び、オフィスを走り回ってしまいました!」
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だが、まだ安心はできない。昨年6月半ばに表舞台に出たことで、厄介な難題も露呈したからだ。彼らはスタートアップでありながら、これまで一度としてスタートアップが経験するさまざまな困難への対処を迫られずにきた。例えばサプライヤーとの交渉、未進出市場の感触を探ること、強大な競合他社との闘い、限りあるリソースの上手な活用...。だがそれらも困難のほんの一部に過ぎない。

ヴァルヨの喫緊の課題は、自社のヘッドセットを工業デザイン、航空業界、不動産会社、病院といった数十の企業ユーザーに使ってもらい、そのフィードバックを得ることだ。


ヴァルヨのプロトタイプのヘッドセット。2017年いっぱいさまざまな業界での多様なテストを行い、18年末までのプロフェッショナル向けマーケットでの販売開始を目指す。米国での特許は取得したが、油断はできない。

コンットリは産業市場に狙いを定めており、まずは米国に製品を投入するつもりだ。ターゲットは工業デザイン会社や設計士、パイロットなどのための教育機関、そしてエンターテインメント業界だ。「20/20」の価格は決まっていないが、数千ドルになる見通しだ。1万ドルを超えることはないという。消費者版の登場はずっと先になる見込みで、将来的にいずれといったところ。

そのころには、数百社の競合VR企業の一部は、解像度や用途の幅においてヴァルヨに追いつき、はるかにしのいでいるかもしれない。中国には、VR開発に取り組むスタートアップがすでに200社以上も存在する。フェイスブックやグーグル、マイクロソフト、サムスンが、すでに開発に取り組んでいることを考えると、アップルやアマゾンがそう後れを取ることはないだろう。

「でも、競合他社は、画質の改良に真剣に取り組んでいません。大衆向けのヘッドセットを作ることだけに力を注いでいるんです」

起業家らしい強気な口調でコンットリは言う。

ヘッドセットの開発を急ぐため、ヴァルヨは昨年9月末、シリーズAラウンドで希望よりやや少ない820万ドルを調達した。追加資金は、マーケティングプログラムを拡大し、チームを40人体制に拡充するために使われる予定だ。

なかなか本格的なブレイクスルーが起こらないVRの世界だからこそ、新しいアイデアの実現に邁進するコンットリのチームを応援せずにはいられなくなる。それが、人情というものだろう。

文=木村理恵 編集=森裕子 写真=サブリナ・ブキン

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