日々の生活の中で、こんな言葉を耳にすることが増えた気がする。例えば、大学生などのミレニアル世代は何かモノがいらなくなったとき、“捨てる”のではなく“メルカリで売れるかどうか”を真っ先に考える。そして、この言葉を聞く度にこう思う。
グーグルが「ググる」という言葉とともに、「グーグルで検索する」行為が世の中のスタンダードになったように、メルカリも何かいらないものがあったときの売り場所として世間に浸透しつつあるのか、と。
また、メルカリは2017年12月、世界累計1億ダウンロードを達成。その勢いはとどまるところを知らない。そんなメルカリの躍進を語る際、「経営陣」にフォーカスが当たりがちだが、それが全てではない。メルカリの本質的な強みは、「現場」にあると言っていい。
数ある現場のチームの中でも、今回は多くの重要な意思決定に際して影でメルカリを支えているデータ分析の専門部署「BI(Business Intelligence)チーム」にフォーカスを当てる。データ分析の力を彼らはどのように活かしてメルカリの成長を実現しているのか──今回、BIチームのマネージャ樫田光(かしだ・ひかる)と、国内版メルカリのプロダクト責任者 伊豫健夫(いよ・たけお)に話を聞いた。
依頼された分析だけでなく、自発的な分析からの提案も
──まず、BIチームはどんな仕事をされているのか教えてください。
樫田:一言で言えば、何らかの意思決定をするための情報提供と提案です。そもそも何を目標とすべきか、からどんな施策をどのターゲットに打つか、もしくは新たな機能追加で効果を出せそうかどうかなど、データを駆使してあらゆる意思決定のサポートを行なっています。
意思決定のための情報提供には大きく分けて2つの種類があります。1つは、例えば企画者の依頼をもとに、AとBどちらのほうが良いかを数値を使って意思決定するという、依頼ベースのパターン。もう1つは、データアナリスト側から分析を元に「この施策を実施した方がいいと思う」「この指標を改善する戦略を取ったほうが良いと思う」などと自発的に提案するパターンです。
一般的にデータアナリストというと、何らかの分析依頼があって、それに対して情報を提供する仕事をイメージすることも多いでしょうが、個人的には自ら施策や事業の方向性を提案する方が重要かな、と思っています。
例えば、新たな施策としてメンバーがAとBの案ばかりに集中しているとき、自分たちがCという選択肢を提案できれば、全体の方向性を変えることができるわけです。
BIチーム マネージャー 樫田光
──プロダクト責任者である伊豫さんはBIチームからあがってきた情報などをもとに、プロダクトへの機能追加や改善を検討していくわけですね。
伊豫:その通りです。いろんなパターンがあって、企画担当者が立てた企画のポテンシャルの裏付けにデータを使うこともありますし、施策のインパクトのシミュレーションを手伝ってもらったり、BIチームの分析を起点に事業目標を掲げたりすることもあります。
──BIチームが上手く機能して事業に寄与した例があれば教えてください
樫田:たくさんあります。例えば、昨年はメルカリUS版を軌道に乗せることが課題でした。日本に比べ、アメリカは「メルカリ」のプロダクトそのものが現地のユーザーにまだ十分に刺さっていなくて、どうやってもっとユーザーに使ってもらうかを考えなければならない段階だったんです。アプリの中で改善すべき箇所は無数にあるのですが、一度に全てをなんとかするのはリソース上難しい。
そのため、まずはどこにフォーカスすべきなのか、データを使って改善ポイントの優先順位を決めていきました。この段階では、アプリ上の各ボタンがタップされる割合や、ユーザーがアプリを立ち上げて最初の1時間でどういった行動をするかまで、かなり細かく数字を分析していきました。