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2018.04.01 10:00

中国モバイル決済戦争「地方で強いWeChat」がアリペイを撃破


地方ではWeChatが優勢

しかし、コンサルタント会社「Pacific Epoch」のSteven Zhuによると、アリババのユーザー層は大都市圏の消費者に偏っており、地方在住者はWeChatを愛用しているという。

「アリペイは、ECに付随して拡大を図っているだけだ。今後の中国の将来像を考えたとき、テンセントの方がアリペイよりも成長余力が大きい」とZhuは言う。

山東省聊城市に住む30歳の女性、Chen Aiyunは「アリペイは要らない」と話す。彼女は、チャットをしたり、コンビニで日常品を購入するのにWeChatを使っている。他のものをECで買う場合には、テンセント傘下のECサイト「Pinduoduo(拼多多)」がお気に入りだという。

「決済アプリを新しくダウンロードするのは面倒だし、スマホの空き容量が減ってしまうので嫌だ」とChenは言う。

テンセントにも課題はある。ユーザーを獲得するためには、アリババに匹敵する広告宣伝費を投じる必要がある。さらに、コンテンツやテクノロジーにも多額の投資を行わなければならないため、利益を圧迫しかねない。3月21日の業績発表で経営陣がこの点について触れると、同社の株価は4.8%下落した。

世界最大規模の「モバイル投資信託」も

しかし、両社にとって大きなリターンが見込める投資であることは間違いない。決済サービスからは、個人の財務データや信用情報を取得することができる。信用を評価するアルゴリズムを使えば、ユーザーごとにカスタマイズしたローンや保険などの新サービスを提供できる。

これらの分野は、急激に市場規模が拡大している。テンセントが提供する消費者向けローン「Weilidai」の貸付残高は、昨年1000億元(約1兆6900億円)に達した。アント・フィナンシャルは、アリペイを介して最大3000ドルまで投資でき、年率4%の利息が得られるオンライン投資信託「Yu’e Bao(余额宝)」を立ち上げた。

Yu’e Baoの運用資産は1600億ドルに達し、世界最大規模のマネーマーケットファンドに成長した。

「プラットフォームから得られたデータは大きな可能性を秘めている。今後数年間で、これらのデータを使った様々な新規事業が生まれるだろう」とKapronAsiaのKapronは話した。

編集=上田裕資

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