CHRO(最高人事責任者)は、その不確実性に対して再現性を迫る役割と言い換えることもできる。しっかりと意図をもって働きかければ、人・組織のポテンシャルは無限に広がる。
そのために、これから人事施策を整えていくとしたら何が必要なのか。一つ重要なのは、CHRO自身が経営の視座を持つことだ。
人事を主語にして考えていては諸施策を見誤ることになりかねない。人事はあくまでもビジョンの実現、それに紐づく経営戦略や事業の推進に際して「人」という経営資源がプラスとなるように働きかけなければならない。逆に、どんな素晴らしいビジョンや戦略も実行されなければ絵に描いた餅であり、その実行・体現行動の主体は結局のところ「人」に帰結するといえる。つまり経営と人事は不可分なのである。
多くの経営者が師と仰ぐゼネラル・エレクトリック社の元CEO、ジャック・ウェルチ氏は「人が第一、戦略は二の次と心得ること。仕事でもっとも重要なことは適材適所の人事であって、優れた人材を得なければどんな戦略も実現できない」と語ったという。
またあるいは、筆者が時代認識を持つ人事責任者の方とお会いすると、非常に視座の高さを感じる。たとえば、ランスタッドの取締役最高人材活用責任者(Chief People Officer)志水静香氏に「働き方改革」について伺った際には、自社という視点も超えて、世の中の価値観変化をどう捉え、社会や自社がどうあるべきかという話に及んだ。
10年前、20年前と比べて価値観も変わってきているが、その潮流を捉えて考え、発信しないと、見当違いのものになりかねない。経営者は人事を語り、人事は経営を語るとでも言おうか。このように、経営の視座で物事を考えると、必然的に外部環境への感度と、中長期的な自社の状況を考えざるを得なくなる。すなわち「今がどのような環境にあるのか」「他社に比較して自社がどういう状況、ポジショニングにあるのか」が、見えてくるのではないだろうか。