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2018.02.11

多様化進む中国の映画業界、若者の「ハリウッド離れ」も進行

中国では不発に終わったスター・ウォーズ最新作(Photo by Hu Chengwei/Getty Images for Walt Disney Studios)

中国の映画業界でこのところ話題にのぼるのが、観客たちがハリウッド映画を以前ほど好まなくなったことだ。若い世代はインドや日本などの映画に目を向けはじめた。また、中国製の映画も近年クオリティを向上させている。

スター・ウォーズ最新作の「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」は調査企業CBOによると、1月の公開以来4200万ドル(約46億円)しか稼げていない。一方で、2017年公開の「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」の興収は7600万ドルだった。また、2016年の「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」は1億3000万ドルを稼いでいた。

北京の調査企業「Ent Group」の直近のアンケートで、西洋の映画が好きだと応えた中国人の割合は55%だった。この数字は2016年には61%だった。

一方、中国で支持が高まっているのがインド製の映画だ。ボリウッドの大スターのアーミル・カーンと若手女優のザーイラー・ワースィムが共演した「シークレット・スーパースター」は今年に入り9200万ドルを稼ぎ出した。アーミル・カーンは2017年公開の主演映画「ダンガル」でもヒットを飛ばし、中国で累計2億ドル以上を稼いだ。

北京のスタートアップ企業に勤める30歳のZhang Zhaohuiは「これまでダンガルを3回観た。ハリウッドの映画は特殊効果ばかりでつまらない」と話した。

中国でこれまで史上最大のヒットとなった映画は2017年の「戦狼 ウルフ・オブ・ウォー(Wolf Warrior 2)」で興収は9億ドルを突破した。この作品は内戦下のアフリカから同胞の中国人を救い出す元特殊部隊員の死闘を描いた戦争アクションで、「中国版ランボー」とも呼ばれている。

Ent Groupの試算では中国の映画市場は早ければ2019年にもアメリカを抜いて、世界最大の規模に成長する見込みだ。中国の大都市では映画市場が飽和状態にある中で、海外の映画企業が新たなターゲットとすべきなのは、地方の観客かもしれない。しかし、地方の人々は中国製の映画を好む傾向が強く、ここに食い込むのはかなり難しい。

インドと中国の合作映画も製作開始

また、中国政府は国内で公開される海外製の映画の本数を年間38本までに制限している。一方で映画業界の関係者は日本やインド、ヨーロッパの映画にも関心を払い、多様なニーズに応えようとしている。

そんな中、最新のトレンドといえるのがインドと中国の合作映画の「Zookeeper」だ。この作品はインドの動物園に務める主人公が中国にパンダを探しに行く物語。主人公と中国人女性とのロマンスも織り込まれており、年内に製作が開始されるという。監督はインド人のカビール・カーンで、撮影は成都市で行われる予定だ。

「中国の映画関係者らは従来よりも多様性にあふれた作品を作り、観客を魅了しようとしている」と調査企業「HS Markit」のDavid Hancockは話した。

編集=上田裕資

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