そのひとつが、「Future Shocks」だ。近年、世界経済に衝撃を与えたショックと言えば、サブプライムローンを発端とした2007年のアメリカの住宅バブル崩壊や2008年のリーマンショックなどを含む一連の国際金融危機が挙げられる。では、最新の「グローバルリスク報告書2018」が予測しているものとは? 将来の危機シーンを紹介しよう。
予想される10の将来的危機
ダボス会議の「グローバルリスク報告書2018」では、次の10の将来的危機(Future Shocks)が提示されている。
1. Grim Reaping:穀倉地帯の同時機能障害が、世界的な食糧供給の十分性を脅かす
2. A Tangled Web:人工知能(AI)が“雑草”のように増殖し、インターネットを機能不全にさせる
3. The Death of Trade:二国間貿易、多国間貿易ともにグローバルリスクに対応できない
4. Democracy Buckles:新しいポピュリズムが、既存の成熟した自由民主主義の社会秩序の脅威となる
5. Precision Extinction:AIが搭載されたドローン船が、世界中の水産資源を一掃する
6. Into the Abyss:政治・政策では対応できない経済・金融危機が生じる
7. Inequality Ingested:バイオ工学と「スマートドラッグ」を持つ者と持たざる者の差が拡大する(スマートドラッグとは、人間の脳の機能や能力を高めたり、認知能力や記憶力を高める薬品や物質の総称)
8. War without Rules:国家間のサイバー攻撃は、開戦合意プロトコルがないために、急拡大する
9. Identity Geopolitics:自国や自地域のアイデンティティを守るための紛争が増加する
10. Walled Off:規制、セキュリティ強化、保護主義への懸念がインターネット(グローバルネットワーク)を分断する
報告書ではこれらの危機に対して解説も用意されているが、多くの人は次のような疑問を持つかもしれない。「これらの危機は本当に起こるのか」「列挙された危機は、いつ、どこで起こるのか」「それがわからないなら、対策検討のしようがない」と。
ただ、このような問いが出て来る段階で、世界の危機管理のマインドセットからは、かけ離れていると認識して欲しい。日本人は「想定首都直下地震で、30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が80%」というような情報を欲しがちだが、それらを得たところで、何の足しにもならないのだ。