「グローバルリスク報告書」は、ただ予測しているだけではない。これらの研究は、ダボス会議に参加する世界のリーダー達へのヒアリングや、政策シンクタンクでも揺るぎない地位を維持している調査機関、そしてグローバルリスク研究を専門とする大学などとの議論を踏まえて実施されている。
リーマンショックからの教訓は、大きな慣性力が働くグローバルシステムの盲点を、事前に誰かが炙り出し、指摘し、論点提示する機能を確保しようということだ。このグローバルリスク研究のチームは、その役割の一端を担っており、それを毎年の報告書と今回10の将来のシナリオという形で提示している。
将来を想像することの「思考訓練」
「Future Shocks」は、一種のシナリオプランニングの結果だ。結論を導き出すまでの過程にこそ、価値や学びがある。
そもそもなぜ「Future Shocks」の特集が組まれたのかといえば、理由は我々の自己満足に対する厳しい警告だ。報告書に記載があるとおり、ここに掲載された10のシナリオは単なる予測ではなく、世界中のリーダーに、将来を想像することの「思考訓練」をしてほしいというものだ。だからこそ、民主主義の崩壊、サイバー攻撃の本格化、地政学リスクの増加など、複雑化や相互依存化が進む社会で我々が見落としている盲点を提示している。
「グローバルリスク報告書」の読み方は、読む者が現在置かれているそれぞれの状況によって、その意味や意義が大きく異なってくる。経営の観点で言えば、継続企業の前提、すなわちゴーイングコンサーン(going concern)の根本を脅かすショックは何かということだ。いま走っている中期経営計画や、日本企業でも始まったSDGs2030への貢献やビジョンについても、それらを固定された計画としてではなく、臨機応変に運用できる計画として捉えている。
みなさんの会社では、これら10の危機にどう備えるのか。あるいはビジネスチャンスとして、どう市場を創るのか。この「グローバルリスク報告書」を読んで、討議し検討する「思考訓練」をしてみてはいかがでしょう。