一方、自然災害の対策にもAI気象予報が活用され始めた。アメリカの国立大気管理局(NOAA)の研究者グループは、AI技術を適用して環境を物理的に理解することで、大きな被害を招く砂嵐や竜巻、ハリケーンなどを予測する機能を大幅に向上させることが可能になることを発見した。
なかでも、AIは雹についてはかなり正確な予測を提供できるという。雹は雨や雪と違って被害が大きく、自家用車への落下をはじめ、毎年数十億ドルの損害を引き起こしているのだ。事前の警報を改善できるだけでも、その損害の多くを回避できる可能性がある。
数十万人のユーザー報告をAIが分析
海外でこうしたさまざまな研究・開発が進められる中、日本ではどのような研究が行われているのか。日本では、膨大な気象データは気象庁や各国の気象機関が観測・収集し、民間の気象情報サービス会社に提供されている。その民間最大手がウェザーニューズだ。独自の観測インフラを構築してきた同社は、ビッグデータの解析、AIの活用といった面でも注目を集めてきた。
同社はゲリラ豪雨の予測について、早期予報を実現している。全国で約7500回のゲリラ雷雨が発生した2016年末、同社の役員は「ゲリラ雷雨の捕捉率は開始当初の2008年は68.7%でしたが、2015年は90%に高まり、予報するタイミングも発生の21分前から50分前と早期に警報を出せるようになりました」と話している。
その要因のひとつとなったのが、スマートフォンのアプリ「ウェザーニュースタッチ」の専用コミュニティ「ゲリラ雷雨防衛隊」だ。一般ユーザーからなる「ウェザーリポーター」から送られてくる雲の写真や雲の発達具合、進路などの報告をもとに、AIを応用した画像解析技術を活用。ゲリラ雷雨の予報精度と解析スピードを向上させてきた。
ウェザーニューズが独自につくりあげてきた観測インフラによって、1日当たり3000万件以上の気象データを取得すると同時に、気象観測器の支給などの特典を与え、ウェザーリポーターからのリポートも活用している。こちらは1日平均13万人、台風接近時などには25万人ものリポーターが参加するという。リポーターそれぞれが肌で感じた生の声を提供することで、より詳細で精度の高い予報を完成させているのだ。
ウェザーニューズのサービス提供は日本だけにとどまらず、アメリカ、ヨーロッパ、中国などで利用者、情報提供者が拡大している。2015年5月にはアメリカの気象情報会社で、世界140か国の会員から気象データを収集する天気アプリ大手・Weathermobからアプリ事業を買収。同年7月には中国最大のソーシャル天気会社で、月間利用者約8000万人のアプリを運営する墨迹風雲(Moji)と提携するなど、その事業展開の場を国外にも広げている。
気象予報の精度がより上がれば、われわれの生活はもっと便利になり、企業活動にも良い影響を与えるだろう。その効果が実感できる日は、もうすぐそこに迫っている。
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