ユーチューブは2018年1月、筆者も含む小規模なチャンネルの運営者らをがっかりさせるEメールを送りつけた。今後は「過去12か月間の総再生時間が4000 時間以上、チャンネル登録者数が1000人以上」という基準を満たすチャンネルでないと、動画を収益化するYouTube パートナープログラム(YPP)に参加できないというのだ。これは新人クリエイターたちに大きな影響を及ぼす変更だ。
問題はユーチューブがYPPの承認プロセスを1つ1つ手動で行っていることだ。つまりある動画が1億回再生されたとしても、チャンネルの承認前であれば収入につながらない。その一方、ユーチューブ側には即座に金が入る仕組みなのだ。
ユーチューブの姿勢は筆者にはこのように見える。「これまでは広告枠を確保するために君たちが必要だった。でも、今は十分な枠が確保できたから、もう君たちは必要ない」
ユーチューブは今後、担当者が動画の内容を精査して承認作業を行うという。承認の可否は担当者がその動画を “クリーン”なものであると認めるかどうかにかかっている。
ユーチューブがYPPへの参加条件を変更するのは今回が初めてではない。同社は昨年7月、再生回数が1万回以下のチャンネルには広告を表示しない措置をとった。今後も新たな規制が導入される可能性もある。
無難な動画ばかりになってしまう危惧
ここで筆者が思うのは、ユーチューブはこの問題についてもっと賢く対処すべきだったということだ。広告主がヘイト動画に広告を出したくないのは理解できるが、表現の限界に挑戦したり、難しい問題に取り組もうとしているクリエイターたちもいる。動画の中で品のない言葉を使うのと、自殺者の遺体を撮影するのとは問題のレベルが全く違う。真っ当な動画を掲載しているにも関わらず、収益化の道を閉ざされてしまった人も多い。さらに言うと、ユーチューブのやり方は公平性を欠いている。
筆者はユーチューブが時代遅れでつまらないサイトになるのではないかと危惧している。規制を強化しすぎれば、無難な動画ばかりになってしまうだろう。チャンネル登録者が多い有名クリエイターは、ユーチューブを離れても自分でブランドと契約して利益を得る道がある。しかし、新しい試みで世に出ようとする無名のクリエイターには厳しい状況になる。
もしかしたら今後、YPPを追放されたクリエイターらがユーチューブに反撃を始めるかもしれない。彼らが一斉に広告ブロッカーを導入したり、定額サービスの「YouTube Red」の使用を辞めたりしたら、ユーチューブは彼らにどんなメッセージを送るのだろうか。