無意味で侮辱的な人事評価、企業がいまだに続けるのはなぜ?

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以下は読者のヘイズから寄せられた便りと、私からの回答だ。



リズさんへ

私は昨年7月、成長中の製造企業に人事部長として就職しました。最高経営責任者(CEO)で上司の「ジェイク」と面談をした際、私が年1度の人事評価制度の廃止を考えていることを伝えました。

全社員に評価表を記入させ、毎年ミーティングを行う評価プロセスは時間と労力の大きな無駄で、大半の従業員が嫌がっている、とのリズさんの意見には私も賛成です。

上司と部下の関係が健全なら、四半期や年間計画の場などで定期的に話をしているはずです。それがなければ、私の方でマネジャーを支援して問題を解決できますが、会話を促すために評価は必要ありません。

私は前職で人事評価制度を廃止しましたが、全員喜んでいました。

もちろん、従業員が必要とするときにはフィードバックが得られるようすべきです。小学生のような採点なしに評価が得られれば、全員の利益となります。

人事評価制度の廃止に関してジェイクからは反対されていませんが、正当な理由が必要なので提案書を書くように言われました。リズさんの意見をお聞かせいただけますか。



ヘイズへ

人事評価は、産業革命時代の産物だ。一日中ベルトコンベヤーの前で部品を磨く仕事であれば、生産ラインに流れてくる部品を数えるだけで簡単に社員の目標達成度合いを測れるだからだ。

しかし、知識労働はより繊細で複雑だ。知識労働者の仕事は、ある時間内にどれだけの部品を磨けたかでは測れない。ある社員が画期的なアイデアを思いついたのは、流れてくる部品を無視して45分間ぼんやりと宙を見つめていたからかもしれない。

人事評価には業績を改善する効果はなく、リーダーシップ手法としての価値はない。しかし、権力と管理の仕組みを作るには非常に便利なので、一部の企業は手放せないでいる。

上司から前年のパフォーマンスの良い面・悪い面を共有されても、従業員の役には立たない。フィードバックが必要なら、数か月後でなくその場で与えるべきだ。

毎週や毎四半期の数値目標ではなく、より大きな目標達成に向けて社員の士気が上がっていれば、わざわざ時間を使って評価や採点を行う必要はない。時間と労力は全て、チームを鼓舞し、励ますために費やすべきだ。もちろん、目標達成を阻む障壁を取り除く必要もある。

人事評価制度が時間の無駄だと言える理由は5つある。

1. 明確な効果なしに、社員の貴重な労働時間を浪費する。上司と部下が両方、評価書の記入、承認、ミーティング、事務的手続きなどに毎年何時間も費やしている。

膨大な時間や労力を投資しても、利益を得るのは誰だろう? (顧客の利益にはならない。顧客のために共有すべき情報であれば、年1度の評価時ではなく、その情報が明らかになった時点で共有されているはずだからだ)
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翻訳・編集=出田静

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