ファン同士のコミュニケーション設計
AKB48といえば、握手券で応援が可視化され、総選挙でランクアップするなど、ゴールに向かうわかりやすい構造が特徴です。そしてそこには、推すことに陶酔する仕掛けが濃縮されています。SHOWROOMは、この構造を、誰もが参加できるようにプラットフォーム化したものなのです。つまり演者(アイドルなど)が生配信の中で歌ったり踊ったりして、それをファンが応援することで生まれる熱狂をオンライン上にいつでもできるように作り出しているのです。
AKB48のメンバー(Photo by TPG / Getty Images)
もちろん、歌うことが、笑わせることでもいいし、話すこと、ただ黙々と作業している様子を見せることでもいい。さらには、SHOWROOMの誰かを応援している人がその応援(演者の魅力など)を語ることで、他の人が彼の応援を応援するというメタな構造が生まれてきているのも、興味深いところです。
SHOWROOMでは、視聴者は、画面上でアバターとして表示されており、中央画面に表示される演者をまるでステージ下から見守るように、先着順に配置されている。さらに課金アイテムで演者を応援した人も、可視化されるようになっています。
さらに視聴者同士で、エールの交換もしあえる。AKBファンが同じ“推しメン”同士で交流し合うように、視聴者同士が交流したりする機能もついているのです。例えば人気アイドルのライブ配信を見ると、最前列のアバターの衣装が全員、演者とお揃いだったりして、視聴者同士の所属意識を反映する仕掛けがあちこちに満載されています。
つまり、ある目的を持って動いている人の熱狂に対して、いかに集団を意識しながら、その中に“自分”を獲得していくか。いかに熱狂の中に、何らかの所属感や達成感を得るかが、SHOWROOMの求心力なのでしょう。
これらは会社や学校、出身地という「肩書き」が自分を守ってくれなくなった中で、何を応援し、応援されるかという「好き」や「熱意」が、互いを結びつけ合う連帯によって、自分を強くしてくれる。時間と距離に関係なく、「好き」が結びつきやすいインターネットらしいサービスです。
なにより、自分が熱を持つ好きな人(推しメン)、好きなコト(推しゴト)を語ることは会社や出身校といった「肩書き」的な自己紹介よりもずっとずっと自分らしさを発揮していくことですし、好きなこと(推しゴト)を追いかけることが誰かの応援を呼び込み、それがお金につながり、おしごと(お仕事)になっていく、ステキなことだと思います。
「肩書き」を離れた、あなたの”推しゴト”を見つけやすい時代を楽しみましょう。
尾原和啓の「働き方革命最前線 ─ポストAI時代のワークスタイル」
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