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高橋 飛翔(左)、高橋 祥子(右)

東大在学中に起業する道を選んだ二人の高橋氏、ジーンクエスト高橋祥子とナイル高橋飛翔。新進気鋭の起業家ふたりに未来はどう見えているのか。また、生涯をかけて解決したい課題はあるのか、語ってもらった。(第1回第2回


高橋祥子(以下、祥子):私が今の事業で挑戦しているのは、ゲノムを中心にヒトの生命の仕組みを明らかにするということで、それがわかったら医療が抱える問題とか、国が抱える問題を絶対に解決できると思っています。

これまでの歴史において、ヒトの平均寿命が延びた最初のきっかけは、栄養状態の改善でした。食料がなかったところから食料がみんなにいきわたって、最近は医療の技術が発展して、今後は予防というフェーズに入っていきますが、そこにも貢献していきたいと思っています。

生命という複雑なものを知りたい、最初に解き明かしたい、それを世の中に還元したときにどういう世界になるのか見てみたい……という気持ちがモチベーションになって頑張れています。健康寿命は延びますが、健康でいることが幸福なのは間違いないと思います。 未来がわかっていて、それに対して前向きに生きられるのは幸福ですよね。

生物の仕組みは純粋で、たとえば政治の世界とはかけ離れています。 生命の神秘の前に立つとみんなが平等。純粋できれいな神秘が広がっていて、心が洗われて、純粋な好奇心を保っていられます。足の引っ張り合いなども、生命活動の一部、つまり個体が生き残るために必死にやっているのだなと思うとピュアなのかもしれない、というあたたかい目で見てしまいますね。

高橋飛翔(以下、飛翔):金融領域で今おきている革命的なものや、AI、遺伝子領域などの技術革新がいままで貧困にあえいでいた弱者を救えることにつながるのではないかと思っています。

たとえば僕は、AI政治を推したい。政局にぶらされるのは人の感情で判断するから。ロジカルに考えられて比較でき、AIが共通の判断基準で考えて提案するというような形になれば、今の資本主義より合理的な判断をするのではないかと思うんです。

また、銀行という仕組みを考えてみると、貧困国の人は手数料を払えないので銀行口座を持てない。すると人々は安全な場所に資産をおけない。家の中に置いて盗まれたりする。でもスマホがあれば仮想通貨で持っておける。仮想通貨のサービスが作られれば貧困の解消に役立つのではないか。いろいろな進歩が弱者のためになるような要素をはらんでいるのではないかという気がするんです。

だから、向こう100~200年間のスコープで見た時に、今まで数百年続いてきた「勝者が勝者を生む」という構造が少し変わるのではないかと思います。すべての人がベーシック・インカム、最低限健康に生きられる環境が整うチャンスがあるのでは、と。そのチャンスの中で、自分が何かできたらいいなと思ってますね。

祥子:私は、サイエンスによって体の状態を可視化したり、数値化できたらおもしろいなと思います。たとえば血液検査がなかった頃は血糖値がどうなっているのか全くわからなかったけれども、今はわかる。同様に、体調が悪いとか、病気が発症しているけれども自覚症状がないとかを全部見える化していきたいんです。

たとえば、鏡の前に立ったら体調が悪そうだとわかるとか、トイレに行ったら尿を分析して“がん”ができ始めているのがわかるとか。それを人に応用すると医療とか美容になるし、植物に応用すると農業が飛躍的に発展する。畜産や環境問題にも応用できる。そういうことをやりたいです。

飛翔:すべてのイノベーションの基礎になる部分を作りたいという感じだよね。ソリューションとその核にある技術は全然違うという気がしていて、祥子さんはやはり技術をつくる人なのかなという気がします。

「なにか」を見つけられない人

祥子:よく「自分がやりたい『なにか』をどう見つけられるのか」と聞かれることがあるのですが、「とりあえずやってみればいい」と私は思うんです。

私の例で言いますと、ゲノムの研究をやる前はイメージもわかなかったのですが、大学の研究室に入って手を動かしてみて、すごくおもしろいことに気づきました。会社の経営も、実際にやるまでは、それが好きかどうかわかりませんでした。

とりあえずやってみたことが、今ではずっと続けられています。やったことがない、触れたことない、勉強したことがないフィールドが多い人ほど、とりあえずやってみることによって、意外と「なにか」を見つけられるのではないかと思います。

飛翔:「なにか」を見つけられない人は「なにか」を見つけたくないのかもしれないですね。自分の人生はこうありたいとか、こういう風になりたいという抽象的なイメージは誰にでもあると思うので。

祥子さんの場合は、なにかを勉強し始めたときにドライブがかかって、好奇心が深まっていくのかと思う。僕の場合は、「こういうふうに死にたい」というところから逆算して、やることを手段としてとらえる。そのやりかたは人によって違っていい。

ただ「こうなりたい」という芯になる思いがない人はたくさんいて、そういう人は持たなくてもいいと思う。芯がない人は芯がある人となにかをするのに向いているかと思います。

構成=星野陽子 写真=藤井さおり

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