ビジネス

2017.12.14

「自覚症状がないものを見える化したい」、若き研究者の描く未来

高橋 飛翔(左)、高橋 祥子(右)


解決したい課題や自分のテーマ

飛翔:僕が関心を持っているのは「環境」と「貧困」。温暖化による疫病の蔓延とか、塩害などのいろいろな問題が貧困に大きく影響してしまっています。それによって人が餓えたり死んだりお金がなくなったりしている。

僕は資本主義が既存のものとは変わりつつあると思います。資本主義の歴史では、ピケティが「資本が資本を生む」というようなことを言っているように、勝者がずっと勝っている。経済格差がどんどん広がり、世界人口が70億人のときに10億人が貧困にあえいでいる。これが世界全体の幸せかと疑問に思います。

気の遠くなる話ですが、なにかしらの方法で環境を改善し、貧困をなくしたいのですが、そのときにNPOに可能性があるのではないかと考えています。極論ですが、NPOは利益をださなくてもいい団体なんです。最大限人を救うことに使える。こういう枠組みは仮想通貨を使った資金調達であるICO(イニシャル・コイン・オファリング)とかの親和性が高いのではないかと思います。

NPOがビジョンに賛同する人たちからICOにより資金を調達し、環境の問題や貧困を改善するという枠組みはいいのかもしれない。非営利領域におけるイノベーションに今は興味があります。

祥子:私のテーマは一貫してサイエンスです。国内の大学は国の財政に頼っているわけですけど、研究費はアメリカの何十分の一ぐらいしかない。今後は、大学内の仕組みだけに頼っているとやりたい研究ができないのではと思っています。一方で民間企業のお金に頼るとやはり企業利益のための研究が優先されてしまい、必ずしも実用化とか経済的な利益を生まないものの研究ができなくなってしまいます。

たとえば虫の研究をずっとやっていた人がいて、後にその虫の成分が難病を治す世紀の大発見になるかもしれないという、セレンディピティみたいなゆらぎを出すためには純粋な研究もやっていくべきだし、私自身もやりたいと思っています。でもそれだとお金がまわらなくて、結局そういう研究はできません。ICOのような枠組みで研究費を稼いで、利益が出たら還元するみたいなこれまでにない新しい仕組みが作れたらおもしろいなと思います。


高橋祥子/ジーンクエスト代表取締役社長◎1988年生まれ、大阪府出身。幼少期の2年間、フランスで過ごす。2010年京都大学農学部卒業。2013年6月、東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程在籍中にジーンクエストを設立。2015年3月、博士課程修了。生活習慣病など疾患のリスクや体質の特徴など約290項目におよぶ遺伝子を調べ、病気や形質に関係する遺伝子をチェックできるベンチャービジネスを展開。一般生活者向けに病気リスクや体質などの情報を伝える遺伝子解析サービスを行う。

高橋飛翔/ナイル代表取締役社長◎1985年生まれ。東京大学法学部卒。大学在学中に「マーケティングドリブン事業開発カンパニー」としてナイルを設立し、代表取締役に就任。企業のインターネット集客課題を解決するデジタルマーケティング事業を展開し、ナイルを業界を代表する存在へと成長させる。2012年には、アプリ情報メディア「Appliv」を主軸としたスマートフォンメディア事業を立ち上げ、現在は全社の経営戦略・事業戦略を担当する。

構成=星野陽子 写真=藤井さおり

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