「今から5年も経てば、既存の政府の通貨を使う人間はバカにされるようになるだろう」とドレイパーはリスボンで開催された「WebSummit」の場で筆者に話した。彼のネクタイには仮想通貨のロゴが刻まれていた。「ビットコインに代表される仮想通貨は普及が進む一方だ。既存の通貨を使用するメリットは今後消えつつある」とドレイパーは言った。
ビットコインの時価総額は約1200億ドルに達している。これは、世界の既存通貨の価値の2兆ドル(約227兆円)と比較すると、まだわずかなボリュームに過ぎない。しかし、ビットコインの価値は2017年だけで700%以上も上昇を遂げている。
ドレイパーが運営するDFJベンチャーキャピタルは、ビットコインに関して一貫して強気の姿勢だ。彼は2014年にオンラインの闇市場“シルクロード”から3万ビットコインを2000万ドル以下で入手した。現在ではその3万ビットコインは2億1400万ドルの価値になった。
ドレイパーによると既存の通貨は国境に縛られているという。ナイジェリア政府の通貨であるナイラは、国境を出た途端に30%価値が下がる。アルゼンチンのペソは国外ではゼロの価値だ。類似した事例は他にも数多くある。
米国のドルや欧州のユーロはまだうまく機能しているが、今後もこの状況が続く保証はない。TNG Fintech GroupのAlex Kongは「特定の通貨を米ドルに両替し、それをまた別の通貨に交換すると1.4%を失うのが当り前の状況だ」と筆者に述べた。
ドレイパーによると仮想通貨の場合は常に価値が保たれ、送金によって価値が減じることがないという。今ではICOを通じて、次々と新たな仮想通貨が生み出されているが、数百もの通貨が生み出されても価値が減じることはないのだという。
「新たな通貨の価値も相互関係により価値が保証されている」とドレイパーは筆者に説明した。「様々な仮想通貨は一つのウォレットで統合して管理される。支払いを行う場合は、その中で最も価値の高い通貨が用いられることになる」
これは誰にでも理解できる理屈とは言い難いかもしれない。しかし、ドレイパーは時間をかけて仮想通貨は人々の暮らしに浸透していくと考えている。
「世間に受け入れられるためには、わかりやすくシンプルなものになる必要がある。仮想通貨に関わる業界の人々が、この問題を解決してく」とドレイパーは述べた。「様々な種類の仮想通貨が今後も生まれるが、それらの全てを一貫性のある指標で値付けし、リアルタイムでやり取り可能になる世界が実現する」