ただし、インドの人口は約13億5000万人で、世帯数は約2億4800万戸だ。米国でのネットフリックス契約数は5000万件を超え、全世帯の半数以上が加入している。サービス地域は190カ国以上に広がり、世帯数に対する普及率が30%を超える国としてはメキシコやブラジル、カナダ、アイルランド、英国などがあげられる。
インド市場においてネットフリックスはやや出遅れた存在だ。現地の巨大メディア企業「スターインディア」が運営する「Hotstar」は2015年2月にサービスを開始。ニュースメディアQuartzによると、同社は既に6300万人の会員数を誇り4世帯に1戸が加入しているという。
ネットフリックスは巨大な作品数を抱えているが、その多くは英語対応のコンテンツであり、ヒンドゥー語作品の少なさが弱みとなっている。ネットフリックスのコミュニケーション部門のジェシカ・リーは先日開催されたシンガポールのイベント「The Netflix Home Experience」で次のように述べた。
「現状ではまだ十分な数のローカル作品がそろっていないが、2016年と比較するとタイトル数を2倍に伸ばしている。ここ1年でインドの作品数を大幅に増やすことに成功した」
リーによるとネットフリックスは現在、「ライース」や「ダンガル」「バーフバリ 伝説誕生」といったボリウッドの一流作品を揃え、映画スターのシャー・ルク・カーンが運営するスタジオとは独占契約を結んだという。
インドの娯楽メディアの市場規模は年間の売上ベースで192億ドル(約2.2兆円)に達する巨大なものだ。しかし、KPMGのレポートによるとインドの動画ストリーミング市場には既に30社以上の競合が存在している。大手としてはHotstar以外にもVootやアマゾン、Sony LIVなどがあげられる。
また、価格面ではHotstarが月額199ルピー(約350円)であるのに対し、ネットフリックスは月額500ルピーと高額だ。さらに、アマゾンの場合は年会費499ルピーで見放題サービスを提供している。
しかし、ネットフリックスのリーは強気な姿勢を崩さず、「我が社の強みはコンテンツの質にある。ライブラリーの成長とともに消費者を説得していくパワーがある」と述べた。
KMPGのデータによると、インドにおけるネット接続が可能な動画デバイスの数は2016年から2021年にかけて2.2倍の成長を遂げ、8億台に達するという。既に競争環境が激化しつつある分野だが、ネットフリックスがシェアを獲得するチャンスは十分残されている。