「SUPA Powered Sports Bra」と名付けられたブラは、生地に心拍数を測るセンサーが内蔵されており、洗濯も可能。前面中央にボタン大のリアクターをつけ、専用アプリにつなげば、AIがユーザーの心拍数データを解析し、ワークアウトをより効果的にするためのアドバイスをくれるようになる。
ファッションデザイナーの母とコンピューターマニアの父のもとで育ったシーモアは、ファッションとテクノロジーをつなげることにキャリアを費やしてきた。SUPAのコンセプトは、「データ・プラットフォームとしてのアパレル」だ。自社のアパレル製品の製造・販売のみならず、他のアパレルメーカーから注文を受けてセンサー内蔵生地の製造なども行う。
シーモアはSUPAを起業するにあたり、マンハッタンにある現代アートの美術館ニュー・ミュージアム・オブ・コンテンポラリー・アートが2014年に開設した芸術・テック系のインキュベーター「NEW INC」に参加。イノベーティブな人材が集うNEW INCでの経験を次のように語った。
──インキュベーターのもとで起業して良かったことは?
NEW INCは、テクノロジーとクリエイティブが融合する分野で起業する人々にとって貴重な場所です。私たちはNEW INCが始まったばかりの時に参加したので、ゼロから新鮮なスタートを切ることができました。所属する他のメンバーも素晴らしく、2年間で3、4人とコラボレートしました。
──参加した時点で、ある程度完成されたプロトタイプはありましたか?
私はこの業界に20年近くいますから、作る商品に関して非常に明確なビジョンがありました。NEW INCに来てすぐに様々なテストや研究、リサーチを行い、可能性を探りました。その一方でメーカーや工場とは既にSUPAの開発を進めていました。(研究と開発の)二つの異なる作業を同時に進めていったのです。
──NEW INCであなたのアイデアは進化しましたか?
Union Square Venturesのアンディ・ワイズマンや、ジョン・マエダといった素晴らしいアドバイザーの指導を受けました。ジョンは元RSID(ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン)学長でMIT(マサチューセッツ工科大学)アドバイザーも務める、ビジュアリゼーションデザインとコンピュテーショナルデザインの大家です。また、他のメンバーからのフィードバックも役立ちました。深く追求できる環境で、同じものの見方をする人たちと出会えました。
──会社の今後をどのように思い描いていますか?
SUPAのビジネスモデルはB2B2C(企業が別の企業に商品を提供し、提供を受けた側の企業が一般消費者に提供する取引形態)です。私たちが販売するセンサーは、ジッパーやボタンのような存在と言えます。つまりブランドやメーカーに卸し、ライセンス契約を結びます。(会社を成長させるためには)メーカーや投資家に私たちの事業内容を知ってもらう必要があります。そのためにどんなコラボレーションが可能なのか、サプライチェーンはどうなっているのかなどを紹介する映像を作ったところです。