インテルが開発中の「自己学習AIチップ」 エビの脳より複雑

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インテルは、人間の脳のように機能する「神経形態学的チップ(Neuromorphic chip)」の開発を進めている。「Loihi」というコードネームの試験用チップは、128個のコアで構成され、個々のコアは1024の人工ニューロンを備えている。

このチップは合計で13万のニューロンと1億3000万のシナプスを備え、ロブスターの脳よりも複雑だという。しかし、800億ものニューロンで構成される人間の脳には遠く及ばない。神経科学者たちは、ニューロンがスパイクというパルス信号で伝達し合っていると考えているが、Loihiも同様の方法で情報を伝達する。

現状の機械学習システムにおけるディープラーニングは、膨大なデータセットと多くのコンピュータを用いたトレーニングに依存する。しかし、インテルによると、Loihiにはそうしたトレーニングが不要で、チップ単体で自己学習をすることが可能だという。

インテルの研究者らは、自律飛行するドローンや自動運転、失踪者を捜索するカメラ、交通量に応じて自動対応する信号など、リアルタイムでの学習が求められるデバイスにLoihiを活用したいと考えている。Loihiは、ニューロン間のスパイクによる情報伝達により、従来のチップに比べてエネルギー効率を大幅に高めることができたという。

「人間の脳は人が思うほど頻繁に情報を伝達していない。Loihiもニューロン間でスパイクが生じない限りエネルギーを消費しない」とIntel Labs のチーフサイエンティストのNarayan Srinivasaは話す。

インテルは、試験用チップがまだ完成していないために具体的な数値は公表していないが、一般的なAIシステムのトレーニングに用いられるチップに比べてエネルギー効率が1000倍高いことを示唆している。

試験用チップはインテルの14nmプロセス技術で製造され、11月に完成する予定だ。インテルは、2018年前半にはAI研究に従事する大学の研究者らにチップを提供したい考えだ。チップの完成はまだだが、インテルは再プログラミングが可能なFPGA(field-programmable gate arrays)と呼ばれるチップを使い、最適なルートの検索や辞書学習などのテストを行ったという。
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編集=上田裕資

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