現代の腕時計に使われている多くの技術が、ひとりの天才時計師アブライアン=ルイ・ブレゲによって開発されたものだからだ。それは、自動巻機構、ミニッツリピーター、パーペチュアルカレンダー、トゥールビヨン、ヒゲゼンマイ、耐震機構、ツインバレルなどなど、目を疑うほどの数である。
また、ブレゲ数字、穴のあいたブレゲ針、ダイヤルに細やかな模様を入れる装飾、ギョシェ彫など、現代の高級腕時計に欠かせない意匠にまで、その能力は及んでいる。もしブレゲがいなかったら、現代の腕時計は、きっと違ったものになっていたことだろう。
そんなブレゲの魅力が多分に詰まった腕時計が“クラシック”コレクション。そして、ブレゲが開発したなかでも、非常に有名で、複雑時計の代名詞的存在となっているトゥールビヨン機構を搭載したモデルが、この「クラシック トゥールビヨン 5317」である。
まず、搭載のトゥールビヨン機構だが、これは1802年に開発されたもの。もう200年以上も前に考案された懐中時計の技術なのだが、これを製作できる時計ブランドは現代でも限られるという非常に難しい技術で、最高難度に位置づけられている。多くのブランドが、トゥールビヨン搭載モデルをラインナップするのは、「トゥールビヨンを製作することができます」という技術力のアピールでもあるのだ。
そのトゥールビヨンを簡単に説明すると、こうである。
機械式時計には、定時性を担うテンプというものがある。このテンプにはヒゲゼンマイがついており、アンクルによって振られたテンプは、それによって戻ろうとする。ところが、懐中時計はポケットの中で直立しているため、重力に引っ張られヒゲゼンマイは次第に下に伸びてしまう。こうなると、設定された定時性が維持できなくなる。
これを根本的に解決するために、ガンギ車やテンプなど調速脱進機構全体をキャリッジ(カゴ)に入れて回転するようにしたものがトゥールビヨンなのである。つまり、キャリッジを回転させることによって、重力の影響をプラス、マイナスの力として振り分け、一回転することで力を相殺して精度を維持する。重力による姿勢差を構造的になくすのではなく、重力を利用して姿勢差を解消する仕組みである。
「クラシック トゥールビヨン 5317」には、このトゥールビヨンだけではなく、ブレゲ針やシルバー色ダイヤルのギョシェ彫り、ケース側面のコインエッジなどブレゲらしさが満載されている。
時計の歴史がたくさん詰まったモデルだが、39mmという大きさにクラシカルな意匠は、まさにエレガントという言葉がぴったりとあてはまる。腕元にあるだけで、品格をあげてくれる腕時計といえるだろう。
BREGUET/クラシック トゥールビヨン 5317
自動巻き、PTケース、39mm径、1494万円、問:ブレゲ ブティック銀座 03-6254-7211
【Forbes WATCH】時計記事一覧はこちら>>