「シャンパン通」になるための5つの知識

フランスのシャンパーニュ地方で作られたスパークリングワインだけが、「シャンパン」と呼ばれる。

「シャンパン」といえば、お祝いの席で飲むお酒というイメージを持っている方が多いかもしれない。その華やかなイメージの裏側には、歴史と人知、ブドウ栽培に厳しい天候との共存がある。

いまや世界中で、シャンパンに倣い、同じブドウ品種を使って、同じ製造方法で、泡のワインが作られている。それでもなお、シャンパンが「泡のワインの最高峰」として認知されているのは、既存の地位に甘んじることなく、時代を見越して発展し続けようとする作り手の姿勢が大きい。その結果として生まれる美味しさに、みんな、魅了されているのであろう。

そんなシャンパンにまつわる基礎知識を5つ、ご紹介したい。

1.シャンパーニュ地方でしか作れない

「シャンパン」(Champagne)という語句は、規則で厳格に守られており、フランス・シャンパーニュ地方で作られたワインにのみ使用することができる。英語圏、とくに、わたしの住むアメリカでは、泡のワインを総称して「シャンパン」と呼ぶ人を見かけるが、厳密には間違いだ。シャンパン以外の泡のワインは「スパークリング・ワイン」と呼ぶのが正しい。

2.冷涼で、厳しい気候条件

シャンパーニュ地方の気候は、ブドウの栽培に恵まれているとは言えない。パリの北東部に位置し、ブドウの栽培可能地域の北限にある。冷涼な大陸性気候に海からの影響も加わり、一年を通して雨が降る。年間平均気温は11度、日照時間は平均1650時間。ブルゴーニュやボルドーの2000時間近い年間日照量と比較するとその少なさがわかる。

緯度が高いため、夏の間は日が長く、ブドウはゆっくりと育つ。春の霜や、夏の雹のリスクもある。2017年も、一部の地域で4月に霜の被害、7月と8月には雹の被害が発生し、ブドウの収穫量が大幅に下がった。

それでも、この気候条件を強みにしたのが面白いところだ。シャンパンの特徴であるフレッシュさや、キリっとした強い酸味を出すためには、冷涼な気候条件で育つブドウが欠かせない。

3.太古の時代、シャンパーニュ地方は海だった

気候条件に加えて、シャンパンを独自のものにしているのが、シャンパーニュ地方に広がる石灰質の土壌(チョーク土壌)だ。この一帯は昔、海だったため、地中には海の生物の化石が埋まっている。土壌とワインの直接的な関係はハッキリとは言えないものの、この土壌が、シャープな酸味や塩みに影響しているといわれる。

石灰質土壌は水はけがよい。それでも、必要な量の水分を保つ。このため、ブドウの木に必要な「適度なストレス」を与えつつ、雨が降らないときには水分を提供できる。また、この土壌は、固すぎないので、ブドウの根が水や養分を求めて、地中深くまで根をはることができるのだ。
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Text by Yuri Shima Edit by Momiji Tobimatsu

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