理由は複数ある。まず、もともとの株価の違いだ。アリババの株価はアマゾンに比べてかなり安い。そのため上昇率は高くなりやすい。中国のインターネット関連銘柄が好調だという背景もある。
だが、アリババが優位といえる最大の理由は、そのビジネスモデルにある。アマゾンよりも収益性が高い仕組みの下で、事業を展開している。アリババの高い営業利益率と利益成長率からも、この点は明らかだ。
巨大市場が第1の要因
アリババのビジネスモデルを支えるのは、次の5つの要因だ。第1に、拠点が中国にあるということ。約5億6000万人のユーザーが、インターネットを週当たり20時間近く利用している。中国は間違いなく、世界最大のインターネット市場だ。その規模は、米国のおよそ2倍にもなる。
第2の要因は、範囲の経済性だ。さまざまな製品をウェブサイトという同一の販売チャネルを通じて販売することで、コスト削減が実現できる。アリババのネット販売サイトは、小規模事業者がノーブランド商品を販売する「タオバオ(淘宝)」と、ブランド品を扱う「Tモール(天猫商城)」の2つだ。
第3の要因は規模の経済。大量販売によって、コスト削減が実現できる。3億5000万人に上るアクティブバイヤー(頻繁に買い物をする顧客)が、同社の高い営業利益率を支えている。
第4に挙げられるのは、ネットワークの広がり。商品・サービスを中心としたユーザー間のネットワークの拡大は、その商品にもサービスにも利益をもたらす。ネットワークが大きくなるほど、ユーザーたちにとってのその商品・サービスの価値は高まる。
第5の要因は、政府との良好な関係だ。どの国においても重要な点だが、政府が経済の「門番(管理者)」である中国ではなおさらだ。
こうした状況に加え、アリババはそのスマートさ(賢さ)をさらに高めている。効果的なビジネスモデルと革新的テクノロジーを組み合わせた優良企業を選ぶ米マサチューセッツ工科大学(MIT)傘下のメディア「MITテクノロジーレビュー」の「2017年版スマート・カンパニー50」ランキングで今年、41位に入った。
株主には警戒すべき点も
ただし、アリババについては注意すべき点もある。出品者から手数料を徴収せず、在庫を保管する倉庫を持たないアリババのビジネスモデルは、アマゾンに比べて競合他社にまねをされやすい。新たなライバルが次々と市場に参入し、利益を奪い合う中国のインターネット経済においては、特にその可能性は高いと言える。
さらに、民間企業の友人にも敵にもなり得る中国政府の存在がある。政府の規制次第で、同国企業の置かれる状況は流動的になる。投資家たちは、アリババの今後の業績について懐疑的な視点も持ちつつ、注視していく必要がある。