小型犬が大型犬より長生きする理由 米ゲノム専門家が解説

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なぜ小型犬の方が大型犬よりも長生きするのか。質問サイトQuoraに寄せられたこの疑問にゲノム学の専門家Adriana Heguyが答えた。

体の大きさと寿命の関係は生物学において興味深いトピックだ。様々な生き物、とりわけ哺乳類では、体の大きな動物の方が小さな動物よりも長生きする傾向にある。例えば象はネズミよりもはるかに寿命が長い。大きな動物の方が代謝のスピードが遅く、代謝が速い方がDNAや組織を傷つけるフリーラジカルの蓄積が速いと言われているが、はっきりと実証されていない理論でもある。

一方で特定の種の中で比較すると、寿命と体の大きさには逆の相関関係がある。特に犬とネズミに当てはまり、人間も同じだという説もある。体が小さい方が大きいよりも長生きということなのだが、その理由として考えられるのは、体の大きい個体は成長の過程でがんを発症する確率が上がるからだ。

研究報告書「Ageing: It’s a Dog’s Life」に記載されている数字を紹介しよう。この研究では32の犬種を調査した結果、40~50キロの大型犬の平均寿命は12~13年だった。一方で、同じぐらいのサイズでも平均8~9年しか生きないものもいる。これは犬が人間によって交配を重ねた動物であり、“純血”の犬を育てるには相当な近親交配が必要だという特殊な事情を反映している。例えばボクサー犬は大型犬だが、がんの発症率が高いため寿命が短い傾向がある。

数年前に74の犬種にもわたる数千の犬の死亡データを分析した研究結果が発表された。それによると、老化の始まる時期は大型犬と小型犬であまり差がないが、大型犬の方が老化のスピードが速いという。

だが犬の老化が速くなるメカニズムに関しては明確には分かっていない。大型犬が持つ遺伝子が老化のスピードを決定している可能性もあるが、関連する全ての遺伝子成分が分かっているわけではない。犬に関して大型であるかどうかを決める遺伝子は少なくとも3つあるが、それらの遺伝子がなぜ老化を加速させるのかも依然として推測の域を出ない。

この分野ではさらなる研究が必要だが、体の大きさと老化の関係を研究する対象としては犬が適していると言える。

編集=上田裕資

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