米フォーブスの「世界で最も革新的な企業」100社ランキングで1位、Fortuneの「the Best Work places for Giving Back 2017」でも1位ー「革新性」と「働きがい」を世界最高水準で両立する企業と言っても過言ではない。
「私たちが成功できたのは、企業文化を“組織の脈打つ心臓”と考えていたからだ」
同社のHR部門「グローバル・エンプロイー・サクセス」を統括するシンディ・ロビンスが、そう断言する背景には、理由がある。現場のソフトウェアエンジニアやマーケターの仕事は、他社と比べて大きな違いはない。そこで、優秀な人材を集めるための最大の差別化要因となるのが、職場環境や企業が尊重する価値観。つまり「企業文化」なのだ。
企業文化は、ハワイ語で「家族」を意味する「Ohana」という言葉で定義。特徴は、家族の範囲の広さだ。従業員のみならず、信頼する顧客やパートナー、慈善活動で繋がる非営利団体のコミュニティという「4つの家族」を、「ひとつのコミュニティ」とする。
世界中の全ての「家族」が集う機会となる年次イベント「Dreamforce」には約17万人が参加。その壮大なスケールが、同社の企業文化の強さを物語っている。
約2万6000人もの従業員をひとつの家族としてまとめあげるために、こだわるのは透明性というキーワードだ。
代表的な施策は、「V2MOM」という独自の意思決定プロセスだ。達成を目指す「Vision(ビジョン)」を、「Values(価値)」「Methods(方法)「Obstacles(障害)」「Measures(基準)」に分解して考えるこの手法は、創業者マーク・ベニオフが考案したもの。年に1度は、「V2MOM」を用いて「今年やるべきこと」の優先順位づけを実施する。
ビジョンに落とし込むプロセスは、マーク・ベニオフらトップマネジメントから順に、組織全体へと引き継いで、会社内全員に公開。社内では「V2MOMにないものは、やらなくてよい」と言われるほど、その結果が全社的な目標として、浸透している。
「V2MOMがあれば、従業員は、成功の評価基準などについて、マネジャーと常に対話が可能。自分の仕事が会社全体にどんな影響を及ぼすかも分かる」
同社はその確立された方法論に、テクノロジーを掛け合わせ、さらに透明性を高めていく。全世界の社員と自由にグループを作り、フランクなコミュニケーションができるコミュニティアプリ「Chatter」の利用もその一つだ。
「透明性なくして、信頼は存在しない。常にオープンで、誠実なコミュニケーションを行える環境を整えること。それこそが、私たち『グローバル・エンプロイー・サクセス』の仕事だ」