また、新しい後輪ステアリング・システムのおかげで、コーナーに入る際、前輪がこれまでのアヴェンタドールよりも路面をしっかりとらえ、高速コーナーでのグリップは特に良い。これまではアンダーステアが出がちだったが、Sではその甘さもすっかり解消された。
「この後輪ステアリングを採用したために、ホィールベースが50cm短く感じられる」とランボルギーニ社は言う。確かに。前のアヴェンタドールよりも、フィードバックがよくて、シャープにくっきりとコーナリングできるじゃないか!
そして、新ECUとトランスミッションの新設定は、シングル・クラッチ・ギアボックスの感覚を最大限に向上させた。そのは、これまでギアを変える度に背中をはたかれるようなショックを与えてきた現行型を過去へと追いやったと言えるだろう。
前のアヴェンタドールには、ストラーダ、スポーツ、そしてコルサと3つのモードがあった。そして、今回のSには、「エゴ・モード」が加わった。どんなエゴかというと、ドライバーの好みに合わせてステアリング、ダンパーを調節することができるのだ。一番レーシーなコルサ・モードに切り換えると、変速、スロットル・レスポンスが速く、よりアグレッシブで、排気音が吠えるように大きくなる。
ドラマティックな外観は室内でも裏切らない。ステルス戦闘機をヒントに、最高級の本革を使ったコックピットは、まるで劇場だ。アウディ・スタイルのスウィッチ類が楽しい。スタートボタンを押すと、僕のアドレナリンはさらに湧き出していた。
あえて不満を言えば、シート・ポジションがわずかに押しつまっていて、185cm以上の身長のドライバーにはちょっと不自然な点か。また、シフトショックは抑えられているものの、まだシングル・クラッチ・ギアボックスのショックが多少残っている。
ランボルギーニは、日本人の心をガシっと掴んでいるようだ。昨年はアヴェンタドールが166台、ウラカンが193台、合計販売台数は359台で、アメリカに次いで世界2位の市場となっている。同社によれば、2017年前半ですでにセールスは40%増しだそうだ。価格4490万円は大きなハードルではなさそうだ。
アヴェンタドールSに乗って嬉しかったことは、これまでの「真っ直ぐ走ってシフトショックが大きい」のが特徴だったランボルギーニから脱皮したことだ。新しい後輪ステアリング・システムをはじめとする改良によって、このモデルは、フェラーリやマクラーレンなどのライバルと同じフィールドに立てるようになった。
とはいえ、どのスーパーカーを一堂に並べたとしても、どういうわけか、みんなが幻惑されるのはアヴェンタドールかも知れない。そのわけは、ご自身の目で確かめられたい。
日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員、ピーター・ライオンによる車連載
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