ただ一方で、中小企業も含め、日本企業には製造現場でのITがかなり活用されており、現場には大量のデータが存在します。しかし、何にも利活用されていない。良質なデータが大量にあるにもかかわらず、ないも同然の状態として置かれたままになっているのです。
これではあまりにもったいない。今後はICT技術などを活用し良質な大量のデータを媒介として、あらゆる企業や産業を繋げていくことで、日本が主導する第四次産業革命を起こしていけるのではないか。これまで不明瞭だった日本の問題点がこの議論を通じてクリアになり、想定以上の成果が得られそうな目処がたった。これこそが、日本の勝ち筋なのではないかと考えたわけです。
そうして、「コネクテッド・インダストリーズ」という、オール日本の政策が誕生しました。
コネクテッド・インダストリーズとは、データを媒介として分野を限定せずあらゆる企業や産業を繋げていくことで、人工知能・ビッグデータ分析など最新技術を活用し、社会や産業などが有機的に繋がった「Society 5.0」を実現させていこうというもの。
製造業という傘の下“一つに統合”しようとするインダストリー4.0の考え方に対して、コネクテッド・インダストリーズは産業や企業などが対等な立場で“並列に繋がる”ニュアンスを持ちます。
ドイツのインダストリー4.0に呼応する形で生まれた、コネクテッド・インダストリーズ。低迷している国内産業の転換期ともいえるこのタイミングで、政府として日本企業が進むべき大方針を打ち出す意味は大きい。また同時に、ドイツは日本と協調することにより、勢いを増すアメリカに対する策を打ったとも捉えることができる。
コネクテッド・インダストリーズとは、企業や機械、人間などが最新技術のもとに繋がることで、新たな価値が創出されるという考え。経済産業省はこの考え方を産業のみに限定せず、例えば 匠の技をデータ化し、伝承することで人と人が世代を超えて繋がるなど、データを媒介として人や機械、企業や産業が繋がり合う未来を描いている。
ビッグデータやAIといっても、最終的にはモノを作り、動かさないといけません。となると、やはり大切なのはモノを作る技術力です。
例えば自動運転分野。自動運転にはグーグルなど海外のIT企業が進出していますが、自動車の運転技術ではまだまだ日本のほうが強い。ドイツの自動車産業も、同様に世界トップクラスの高い技術を持っている。
そんな日・独の自動車産業が本気で組んで一元的に技術や走行データを蓄積したら、おそらく年間何兆キロメートルという走行データが集まってきます。そうなったら、我々は世界のメガプラットフォーマーになれるでしょう。
競争ではなく、強みを活かした「協調」をしていけば、日本はもっと強くなるはず。ただ、まだまだそのアドバンテージを活かしきれていない、それがいまの課題です。
ビックデータ分析やAI活用、IoT領域に、一部のスタートアップだけでなく大手企業も進出するようになって久しい。それぞれの技術は高まっているが、分散する多領域を一体誰が繋げるのか? コネクテッド・インダストリーズの課題は、まさに「人」だ。日本の教育システムは対応できるのだろうか。
コネクテッド・インダストリーズが掲げる社会を実現させるには、人材育成が非常に重要な課題です。今年のキーワードは、リカレント教育。いまの時代に適合した学び直しができるような環境づくりです。
これから必要な人材は、文理融合型。アメリカでは、歴史学と経済学、哲学と電子工学など別分野の学問を掛け持ちで専攻しているのは普通のこと。アメリカの学生のように、様々な分野で活躍できるマルチな人材がいま必要とされています。